本記事は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです(取材日:6月26日)。円安、株安、金利上昇(債券価格下落)……おまけに暗号通貨も大幅安。とはいえ、現金で持っていても、昨今の物価上昇で実質的な資産価値は目減りしている状況です。そのようななか、いったいどのような投資をおこなえば資産を守ることができるのでしょうか。荒れた相場でこそ真価を発揮する「ヘッジファンド」についてみていきます。
5月は「ヘッジファンド戦略」が好調
5月月間のヘッジファンド戦略(ユーリカヘッジのヘッジファンド全体の指数+9つの大分類のヘッジファンド戦略指数)の騰落率([図表1])をみると、破綻債券とマクロの2戦略がプラス、CTAなども底堅いリターンとなった。
当月はハイイールド債の底堅さや原油などのコモディティの良好なトレンドがパフォーマンスをサポートしたとみられる。
「ヘッジファンド投資」の意義・メリット・活用方法
ヘッジファンドは一般的に伝統的資産・戦略とは異なるリスク・リターン特性を持ち、「オルタナティブ投資※」のなかでも「オルタナティブ戦略」として位置づけられる。
※「オルタナティブ投資」は、株式や債券といった伝統的な投資資産とは異なる①「代替資産(一般的にコモディティ、リート、インフラ、プライベートエクイティ等が含まれる)」と従来と異なる手法・戦略である②「代替戦略」の2つに分けられる。オルタナティブ投資に注目が集まる理由として、運用サイドとして、①低金利環境下、少しでも高いリターン特性のある資産・戦略への投資ニーズが高まっていること、②リスクを低減させながら持続可能な投資パフォーマンスを獲得するために資産・戦略の分散の必要性が高まっていること、また販売サイドとして③顧客の最善の利益追求(顧客特性に応じた商品の提供等)など金融機関のあいだでフィデューシャリー・デューティーへの取り組みが広がっていること、等が挙げられる。
日本では低金利環境下、伝統的資産・戦略とは異なるオルタナティブ資産・戦略を活用することで、リスクを低減しながら少しでも高いリターンの獲得を目指す一手段としてヘッジファンド投資に注目が集まる。
一般的にヘッジファンド投資は
(Ⅰ)異なるリスクを取ることで伝統的資産よりも高いパフォーマンス(ハイリターン)を目指す積極的な利益追求としての活用ケース
(Ⅱ)市場に不透明感が強まるなかでポートフォリオのダウンサイドリスクを管理するヘッジとしての機能(伝統的資産の下落リスクを抑制)
(Ⅲ)リスクをコントロールしながら絶対収益(および市場平均を上回る利益)を追求するためのひとつの投資手段(ミドルリスクミドルリターンのイメージ)
として活用されることも多い。
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東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)
山一證券、メリルリンチ日本証券、損保ジャパンアセット(現SOMPOアセット)などでの富裕層・法人営業に加え、年金基金、投資信託のアナリストやファンドマネージャーとして新興市場やオルタナティブを含む幅広い市場・商品の担当責任者を経て、2016年に東海東京調査センター入社。
現職では短中期の戦術的資産配分(タクティカル・アセットアロケーション)やオルタナティブ投資(ヘッジファンド・テクニカルやコモディティ戦略含む)の視点を踏まえたグローバルな日本株の市場分析等を行う。他の代替資産・戦略としてJリート投資戦略、ESG投資戦略、行動ファイナンス投資戦略などもカバーしている。
英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA。アライアント国際大学・カリフォルニア臨床心理大学院米国臨床心理学修士号(MA)。慶應義塾大学商学部卒。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、国際テクニカルアナリスト連盟検定テクニカルアナリスト(MFTA)、CFP、英国王立勅許鑑定士(MRICS)、不動産証券化協会認定マスター、中小企業診断士。
日経CNBCなどのTV・メディアに出演。日経新聞、QUICK、ロイター、ブルームバーグ、時事通信、東洋経済オンライン、幻冬舎ゴールドオンラインなどでも執筆、コメントを行う。ヘッジファンド・テクニカルのキャリアとして世界のテクニカルアナリスト協会を束ねる国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)の理事などを歴任。早稲田大学ビジネスファイナンスセンターや同志社大学、青山学院大学等で講師を務める。
著書には投信営業に行動ファイナンスアプローチなどを活用した『会話で学ぶ!プロフェッショナルを目指す人の「投信営業」の教科書』(2021年)がある。
著者プロフィール詳細
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連載東海東京調査センター「オルタナティブ投資戦略取材レポート」