シニアストラテジストが「相場調整時のESG投資戦略」を解説 (※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。ロシアのウクライナ侵攻を受けて、大幅に調整した欧米株式市場。こうした局面で投資戦略を練る場合、どのようなポイントに注目すべきでしょうか。ロング、ショートそれぞれの視点から中村氏が解説します。

欧州株ESGファンドから資金が流出

欧米株式市場は、2022年に入り、FRBによるオーバーキルリスク(金融引き締めにより景気を過度に冷やす懸念)やロシアによるウクライナ侵攻を受けた地政学リスクの高まりなどが市場の不透明感を強め、2~3月にかけ大きく調整した。

 

原油価格が年初来高値(WTI原油先物が一時130ドル台まで急騰)から調整したことや、3月中旬開催のFOMCで、パウエルFRB議長が米国経済に対し強気な見通しを示した(米経済は極めて強いとの認識を示した)こと等が、投資家心理の好転をもたらし反発の動きとなった。

 

この間の欧米株の「ESG特化型とESG除く(Non ESG)ファンド」の週間資金フロー(EPFR集計)をみると、ロシアとウクライナに対し地理的に近く、またロシアに対しエネルギー依存度が高い欧州の株式ファンド(ESGおよびESGを除くファンド両方。ここでの欧州の定義・データは西欧)から資金が大きく流出していたことがわかる。

 

一方、米国株ファンド(ESGおよびESGを除くファンド両方)からはほとんど資金が流出していなかった。

 

サステナブルな視点や、足元の地政学リスク(ウクライナ情勢の緊迫化)を歴史のなかでの一過性のイベントと捉えるならば、投資家による一喜一憂したスタンスの顕在化や、ESGテーマ型ファンドからの近視眼的な資金流出が生じたとも捉えられる。

 

筆者は、長期的にはウクライナ情勢が落ち着きをみせるタイミングが来るとの見方をとっている。

 

しかし仮に、ESG投資によるリスク改善やパフォーマンス押し上げの一端を、ファンド等の需給要因が担っていた場合(のちのち学術的にその有無が実証されることになろう)、米国ESG株に対し軟調なパフォーマンスとなっている欧州ESG株をオーバーウェイトすることで(資金流出した分の資金還流を通じて)それ相応のリスクリターンの改善が狙える可能性もあろう。

 

一方、もう一段ウクライナ情勢が悪化し、グローバルマーケットに大幅な調整圧力がかかった場合には、欧州ESGファンドから一段と資金が流出する可能性もある。

 

その場合は大型バイアスがかかりやすいといわれるESGポートフォリオだからこそ、大型株の欧州ESG関連銘柄が一段とアンダーパフォームするリスクもあろう。

 

そうしたリスクを回避しながら欧州のESG投資のロングポートフォリオを維持するためには、バリュー面で割安感があり、かつESG項目の改善が先行き期待できる銘柄群のなかで(ESGモメンタム戦略を活用)、独自のビジネスモデルを持ち外部環境に振らされにくい小型のESG関連銘柄を選別し、分散投資を行うことも一案となろう。

 

ポートフォリオの投資アイデアの1つとして欧米株投資に活かしたい。

 

東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)

山一證券、メリルリンチ日本証券、損保ジャパンアセット(現SOMPOアセット)などでの富裕層・法人営業に加え、年金基金、投資信託のアナリストやファンドマネージャーとして新興市場やオルタナティブを含む幅広い市場・商品の担当責任者を経て、2016年に東海東京調査センター入社。

現職では短中期の戦術的資産配分(タクティカル・アセットアロケーション)やオルタナティブ投資(ヘッジファンド・テクニカルやコモディティ戦略含む)の視点を踏まえたグローバルな日本株の市場分析等を行う。他の代替資産・戦略としてJリート投資戦略、ESG投資戦略、行動ファイナンス投資戦略などもカバーしている。

英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA。アライアント国際大学・カリフォルニア臨床心理大学院米国臨床心理学修士号(MA)。慶應義塾大学商学部卒。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、国際テクニカルアナリスト連盟検定テクニカルアナリスト(MFTA)、CFP、英国王立勅許鑑定士(MRICS)、不動産証券化協会認定マスター、中小企業診断士。

日経CNBCなどのTV・メディアに出演。日経新聞、QUICK、ロイター、ブルームバーグ、時事通信、東洋経済オンライン、幻冬舎ゴールドオンラインなどでも執筆、コメントを行う。ヘッジファンド・テクニカルのキャリアとして世界のテクニカルアナリスト協会を束ねる国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)の理事などを歴任。早稲田大学ビジネスファイナンスセンターや同志社大学、青山学院大学等で講師を務める。

著書には投信営業に行動ファイナンスアプローチなどを活用した『会話で学ぶ!プロフェッショナルを目指す人の「投信営業」の教科書』(2021年)がある。

●オルタナティブ投資戦略(東海東京TV)
https://www.tokaitokyo.co.jp/tv/public/market/global.html

著者紹介

連載東海東京調査センター「オルタナティブ投資戦略取材レポート」

このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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