本記事は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです(取材日:6月8日)。3月下旬から足元までの日本株の動きを振り返るとともに、年後半に向けてどのような投資戦略が適当か、中村氏が考察します。
日本株は当面「堅調な相場展開」が見込まれる
3月下旬から足元までの動きを簡単に振り返ると、日経平均株価は、3月25日に2万8,338.81円の戻り高値をつけたが、その後利益確定売りが強まり、5月12日に2万5,688.11円まで下落した。
FRBによるタカ派スタンスが米10年債利回りに上昇圧力をもたらし、グロース株中心に大きく値を下げる展開となった。またウクライナにおける地政学リスクが残るなか、ゼロコロナ政策を掲げる中国でロックダウンが継続し、中国景気の下押し圧力が強まるとの見方も上値を抑制した。
しかしその後は、
①PERなど相対的な日本株の割安感
②インバウンド規制の緩和などを受けた先行きの経済正常化
③7月の参院選に向けた日本株独自のモメンタムの強さ(政策支援や政権の安定度に対する評価を含む)に対する期待
等が株価を支え、6月8日には、日経平均株価は2万8,200円台を回復した。
当面、経済のモメンタムの強さ(日本は1-3月期のGDPを底に4-6月期以降の回復が期待される)や割安なバリュエーション等を背景に日本株は底堅い動きが継続すると想定し、強気なスタンスを維持したいと考える。日経平均株価においては200日線を明確に突破したことから、当面の上値目途を心理的節目の2万9,000円程度と想定し、押し目買いを継続したい。
日本株は年央までは堅調な相場展開を想定しているが、年後半にかけては、FRBによるオーバーキルや米中間選挙の不透明感などを背景に調整色を強めるリスクが引き続きあるとみている。特に景気感応度の高い原油の動向について注目することで今後の株式市場の調整リスクの度合いを掴んでいく必要があろう。
東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)
山一證券、メリルリンチ日本証券、損保ジャパンアセット(現SOMPOアセット)などでの富裕層・法人営業に加え、年金基金、投資信託のアナリストやファンドマネージャーとして新興市場やオルタナティブを含む幅広い市場・商品の担当責任者を経て、2016年に東海東京調査センター入社。
現職では短中期の戦術的資産配分(タクティカル・アセットアロケーション)やオルタナティブ投資(ヘッジファンド・テクニカルやコモディティ戦略含む)の視点を踏まえたグローバルな日本株の市場分析等を行う。他の代替資産・戦略としてJリート投資戦略、ESG投資戦略、行動ファイナンス投資戦略などもカバーしている。
英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA。アライアント国際大学・カリフォルニア臨床心理大学院米国臨床心理学修士号(MA)。慶應義塾大学商学部卒。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、国際テクニカルアナリスト連盟検定テクニカルアナリスト(MFTA)、CFP、英国王立勅許鑑定士(MRICS)、不動産証券化協会認定マスター、中小企業診断士。
日経CNBCなどのTV・メディアに出演。日経新聞、QUICK、ロイター、ブルームバーグ、時事通信、東洋経済オンライン、幻冬舎ゴールドオンラインなどでも執筆、コメントを行う。ヘッジファンド・テクニカルのキャリアとして世界のテクニカルアナリスト協会を束ねる国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)の理事などを歴任。早稲田大学ビジネスファイナンスセンターや同志社大学、青山学院大学等で講師を務める。
著書には投信営業に行動ファイナンスアプローチなどを活用した『会話で学ぶ!プロフェッショナルを目指す人の「投信営業」の教科書』(2021年)がある。
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