(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです(取材日:5月18日)。4~5月のリート動向と今後の見通しについて、中村氏が解説します。

マーケット動向…グローバルのなかで底堅く推移

J-REITの動きを示す代表的な指数である東証REIT指数(以下、J-REIT)は、小幅な下落となった(期間:4月13日~5月17日)。

 

グローバルベースでは、長期金利の急上昇や、ロシア・ウクライナ情勢など地政学リスク(経済制裁などによる先行きのグローバル景気の減速等を含む)が意識され、欧米豪REITは10%程度の大幅下落となった。

 

国内株(TOPIX)との相対比較では、J-REITが小幅に下落(-0.10%)するなか、国内株が0.17%の上昇となったことで、J-REITは株式に対し0.27%のアンダーパフォームとなった。セクター別では、オフィスと住宅指数が上昇した一方、商業・物流等指数が下落した。

東京都心5区のオフィス空室率は

J-REITの取得資産の概ね4割を占め、指数ベースでの影響度が大きいオフィス市況について毎月、東京都心5区の統計をフォローしている。

 

2022年5月12日に三鬼商事が東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の4月時点のオフィスビル平均空室率と賃料を発表した。空室率は6.38%と小幅(+0.01%)に上昇した[図表1]。

 

[図表1]東京都心5区のオフィスビル空室率と賃料の推移

 

4月は大型解約の影響が出たが、既存ビルの大型空室に成約が進んだことなどから前月比でほぼ横ばいとなった。新築ビルの4月時点の空室率は19.29%[図表2。前月比-0.7ポイント]。

 

[図表2]東京都心5区の新築・既存のオフィスビル空室率の推移

 

4月は新規供給がなく竣工1年未満のビルに小規模な成約がみられたようだ。既存ビルの4月時点の空室率は6.25%(前月比+0.02ポイント)。4月は館内縮小や集約に伴う大型解約の動きがあった一方、ビジネス地区外からの移転などによって大型空室に成約が進んだ。

 

平均賃料(3.3平方メートルあたり)についても20,328円(前月比-38円)となり、21ヵ月連続して下落した。5区別の空室率をみると、IT・スタートアップの多い渋谷区の空室率が前月比で大きく下落したが、(空室率が最も高い)港区の空室率は依然として高止まりしている[図表3]。

 

[図表3]東京都心5区別のオフィスビル空室率の推移

 

また賃料の前年比をみると底打ちはしているものの、区によってまちまちのトレンドとなっており、全体の改善度合いは鈍いといえよう[図表4]。

 

[図表4]東京都心5区別のオフィスビル賃料前年比の推移

 

経済正常化が進展した場合でも、新型コロナ前のように全面的にオフィスに人が戻らず、ハイブリッド(オフィスと在宅・リモートとの併用)が主流になるとの見方は根強い。

 

移転に伴って賃借面積を縮小する動きなどから2次空室の動きが全体の空室率の高止まりをもたらす可能性があろう。加えて、来年には東京23区のオフィスビルの大量供給問題「2023年問題」も抱えており、(指数への影響度が大きい)オフィスREITの上値を抑えるとの見方を維持する。

 

次ページ引き続きホテル特化型リートが堅調

このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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