「福岡圏の大型物流施設」の開発ペースは加速か
•福岡圏のロジスティクスマーケットでは、大型の開発計画が増えている。大型マルチテナント型物流施設(LMT*)のストック増加率は、2015年から2020年までの年平均7%に対して、2021年から2023年は同18%に上昇する。
•大手企業の大規模ニーズが需要を牽引している。LMT空室率は2019年Q2以降0%が続き、実質賃料は急上昇。デベロッパーが投資しやすい環境が整ってきた。
•福岡圏のLMTストックを首都圏、近畿圏と比較すると、人口や産業集積度合いに鑑みて福岡圏のマーケットには未だ拡大の余地がある。
•2021年以降は新興立地での開発が増えるが、プレリーシングは総じて順調。需給バランスは安定して推移する見通しである。2022年Q4時点でLMTの空室率は3.7%まで上昇するとみられるものの、LMT実質賃料は3,380円(対2020年Q4比+7.3%)を予測する。
*大型マルチテナント型物流施設(LMT=Large Multi-tenant property)
原則として複数テナントを想定した賃貸物流施設。
首都圏、近畿圏:延床面積10,000坪以上
中部圏、福岡圏:延床面積5,000坪以上
福岡圏のロジスティクスマーケットでは、大型の開発計画が増えている。大型マルチテナント型物流施設(LMT)を対象とした集計では、ストックの増加率は2015年以降2020年までは年平均7%ほど。これに対して、2021年から2023年のストック増加率は年平均18%に高まる。2017年に竣工した物件の空室消化に時間がかかったこともあって開発意欲はここ数年限定的だったが、今後は拡大ペースが加速する。
「福岡圏の物流マーケット」に注目が集まる3つの理由
ここにきて福岡圏の物流マーケットに注目が集まるのには、いくつか理由が考えられる。
1つ目は、旺盛な需要を背景とした空室の極端な減少である。2017年Q3に15.2%まで上昇したLMTの空室率は、その後急速に低下し、2019年Q2以降2020年Q4まで0%が続いている。2020年Q3に竣工した1棟も満室稼働であった。2021年に竣工する予定の物件3棟は、いずれも満床となる見込みである。中小型の既存施設でも、まとまった空室はほとんどない状態だ。
2つ目としては、全国に拠点を持つ大手企業からの需要が、福岡を含む地方都市において増えていることが挙げられる。
こうした企業は、全国で在庫管理や物流網の再構築を図っており、その施策が福岡圏でも形になって表れてきた。
自然災害の頻発によるサプライチェーンの寸断や、ドライバー不足による輸送費の高騰も、こういった動きを促している。また、荷主企業から直接の引き合いが増加していることも需要を押し上げている。大手の荷主企業は、長期的な生産・販売戦略に沿って、これからの成長市場と見極めた場所に拠点を設けていく。また、設備の自動化など効率的な配送センター運営のモデルを持っているため、大規模な面積を賃借するケースも多い。
こうした荷主企業の動きは他の業界にも波及する可能性があるため、物流会社にとっても新たな営業床を確保するための先行投資を進めやすくなる。こうした流れは2020年竣工物件(約12,000坪)の一括借りが契機になったと考えられる。実際、それ以降の需要の大型化は明らかだ(Figure2)。
1社あたりの契約面積は、2014年から2019年竣工物件の平均3,800坪に対し、2020年-2021年竣工物件の内定状況では10,000坪を上回る見込みである。
3つ目の理由としては、上記2つの理由の結果として、賃料が上昇していることが挙げられる。福岡のLMTの実質賃料は、近畿圏や中部圏の賃料水準を2割程度下回っていたが、空室率が0%となった2019年Q2を基点に急上昇した。2020年Q4時点の賃料は3,150円/坪で、2019年Q2時点の賃料を10%近く上回った。
賃料が上昇して一定の利回りが期待できるようになったことで、デベロッパーが投資しやすい環境となった。足元ではテナントの内定ペースも早まっているため、数年先の開発計画も検討されるようになっている。
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