人口の都市部への集中が数十年にわたってさらに進む
2023年12月22日、国立社会保障・人口問題研究所(IPSS)が新たな地域別の将来人口推計を発表した。同推計は、総務省「国勢調査報告」による2020年10月1日現在の人口を基準としており、2023年4月に発表された最新の全国推計とも整合する。
推計期間は前回2018年3月の推計(2015年基準)から5年延長され、2050年までの5年ごととなっている。
今回新たに発表された推計値からは、日本の人口の都市部への集中が向こう数十年にわたってさらに進むことが示唆される。同推計によれば、2020年時点で主要21都市(20政令指定都市+東京23区)の日本の総人口に占める割合は30%弱だったが、2050年には3分の1強となる。
また、生産年齢人口(15~64歳)に占める割合は、2020年時点で約32%だったところ、2050年には36%を超える見込みである。
2018年時の推計と比べると、特に生産年齢人口は主要都市への集中がより加速する予想となっている(Figure1)。
[Figure1]主要21都市が全国の人口に占める割合
出所:国立社会保障・人口問題研究所 2023年12月
東京23区の総人口は2030年に1000万人を超える
2023年4月の全国推計によれば、日本の総人口は2030年までに2020年比5%、2040年までに同10%、2050年までに同17%程度減少する。
それに照らして、今回発表された地域別推計をみると、47都道府県のうち46道府県で人口の減少が続くが、東京都だけが2040年までは人口が増え続け、その後は緩やかな減少に転じると予想されている。
主要21都市(20政令指定都市と東京23区)でも人口は減り続けるが、全国よりは減り方が緩やかである(Figure 2)。
ただし、主要21都市のうち東京23区、さいたま市、川崎市、福岡市の4都市はいずれも2050年の人口が2020年時点を上回る見込みとなっている。さいたま市と福岡市は2035年まで、東京23区と川崎市は2045年まで人口増が続く。
東京23区の人口(2023年10月時点で978万人)については、2030年までに1000万人を超え、2045 年には対2020年比で+5.7%の1029万人となる。その後は減少に転じるが、それでも2050年の人口は2020年を5%以上上回る予想である。
[Figure2]総人口推計 全国と主要21都市(対2020年比)
出所:国立社会保障・人口問題研究所 2023年12月
生産年齢人口は主要都市のうち4都市で向こう数年は増加
生産年齢人口(15~64歳)については、主要21都市のうち、先の4都市(東京23区、さいたま市、川崎市、福岡市)では2025年ないし2030年まで増えるが、それ以降はいずれの都市でも減少する見込みである。
ただし、これらの4都市に加えて仙台市、千葉市、横浜市、名古屋市、大阪市といった多くの主要都市では、全国よりも生産年齢人口の減り方が緩やかとなると予想されている。
[Figure3]生産年齢人口推計 全国と主要21都市(対2020年比)
出所:国立社会保障・人口問題研究所 2023年12月
主要都市部での賃貸住宅ニーズは今後も見込める
CBREでは、2023年7月付のレポート「日本の賃貸住宅市場:少子高齢化でも需要が見込める理由」において、人口が集中する都市部、特に東京23区で住宅の賃貸ニーズが長期にわたって期待できるとした。
今回IPSSが発表した地域別人口推計では、前回2018年の推計よりも都市部への人口集中がさらに強まることが想定されている。東京23区とその周辺のさいたま市と川崎市、および福岡市では人口が今後も増えることが予想されており、これらを含む主要都市では賃貸住宅の需要が今後も安定して見込めるだろう。
なお、IPSSの人口推計における移動率の推計は過去の人口移動に基づいており、将来の産業集積によって期待される人口流入などは反映されていない。また、人口推計には日本人・外国人の区別がない。
2023年6月時点の在留外国人は322万人と、2013年からの10年間で1.5倍に増えているが、人手不足が深刻化する状況にあって、外国人材のさらなる活用が必須となっている。日本政府は外国人労働者の受け入れを拡大すべく、技能実習制度の大幅な改定を進めようとしており、高度外国人材への支援や制度整備の必要性も掲げている。
したがって、地域によっては人口動態が推計値からプラス方向に乖離する可能性もあるだろう。
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