経済基盤が安定すると、人は心に余裕を持ち、豊かな人生を送れることを多くの大家を取材して強く感じたという。1万人の大家を取材してきた著者が、サラリーマンの定年後に毎月着実に家賃収入を得ることができる不動産で資産を増やす方法を伝授する。本連載は賃貸不動産オーナー向け経営情報誌「家主と地主」の編集長の永井ゆかり氏の著書『1万人の大家さんの結論!生涯現役で稼ぐ「サラリーマン家主」入門』(プレジデント社)から一部を抜粋、再編集した原稿です。

定例会議で改善策を話し合って実行した4施策

担当者との「月1会議」でリーマン・ショックを乗り越えた

 

42戸の賃貸住宅を所有する愛知県豊田市の加藤芳雄さんは、リーマン・ショックの時に満室が続いていた経営状況から、一転、入居率が62%に落ちた経験を持つ。この逆境から見事1年後には満室に返り咲いたが、背景には管理会社との協力関係があった。

 

加藤さんは、リーマン・ショック以前から、賃貸経営には管理会社との連携が重要と考え、毎月定例会議を行っていた。毎回50分ほどで、管理会社の管理部門担当者と仲介部門担当者、加藤さん家族が参加する。会議のテーマは、主に空室情報、市場情報、リフォーム、ごみステーションの不法投棄など現状の問題点について話し合う。テーマは毎回、加藤さんが決めて、議事録は管理部門担当者がまとめる。

 

賃貸経営には管理会社との連携が重要と考え、毎月定例会議を行っていたという。(※写真はイメージです/PIXTA)
賃貸経営には管理会社との連携が重要と考え、毎月定例会議を行っていたという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

2019年11月には210回を迎えた。これまで行ってきた定例会議が最も効果を発揮したのは、リーマン・ショックの時だった。満室だった入居が一気に16戸空室になったのだ。当時、加藤さんの物件では空室7戸が損益分岐点だったため、課題は入居率の改善となる。定例会議で改善策を話し合った結果、以下の4点を実行することになった。

 

1点目は「仲介会社の拡大」だった。当時、7年間共に対策を講じてきた管理会社の仲介力が下がっていた。そこで、仲介する会社を、1社から他の不動産会社を含めて5社に増やすことを決断したが、長年取引している管理会社に、仲介会社を増やすことを伝えるのは辛かったという。管理会社は、その気持ちを汲んで他の不動産会社にも仲介を拡大することに納得した。蓋を開けてみると、新規仲介会社が奮闘した。

 

2点目は、家賃を下げるキャンペーンの実施。家賃を3000円下げた。周辺の物件より半年ほど早く下げたため、先手必勝が奏功した。

 

3点目は、リフォームを行ったこと。リーマン・ショック前までは、人材派遣会社のスタッフ向けに3DKの部屋を3人入居用に貸し出していたが、人材派遣の需要拡大が見込めないことからターゲットを新婚、ファミリーへとシフト。そのため、間取りを2LDKに変更し内装も変更した。

 

最後の4点目は、清掃など環境美化の徹底だ。共有のごみ置き場の修理、ごみの分別、1階専用庭の草むしり、春・秋の環境美化運動、放置自転車の整理、壁・給排水管の保全、結露防止の通知の7項目の改善策を行った。

 

以上の4点を実行した結果、8カ月後には15戸、1年かけて16戸すべての空室が解消した。

 

「家主一人ではうまくいかない。家族をはじめ管理会社、リフォーム会社、仲介会社、さらには地域とのコミュニケーションを考えながら進めていくことが、いい環境をつくり出す」と加藤さんは語る。

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