地震によるけがは労災保険の対象になる場合も
災害発生時には、建物や設備の被害だけでなく、従業員の負傷にも注意が必要です。「地震によるけがは労災保険の対象にならない」と考えてしまうケースがありますが、必ずしもそうではないといいます。
業務中に被災した場合、災害の原因が地震であっても、業務に伴う危険が地震によって現実化したと認められる場合には、労災保険給付の対象となる可能性があります。
例えば、
・事業所内で設備や陳列棚などが倒壊し、従業員が負傷した
・業務中に地震による危険が発生し、その対応過程で負傷した
といったケースでは、事故の状況を踏まえて労災に該当するか判断されます。
「地震や津波などの自然災害が原因の場合、『会社の責任ではないため労災にならないのではないか』と考える事業主もいます。しかし、労災保険では、事故の原因が自然災害であるかどうかだけで判断するわけではありません。業務中に発生した災害で、業務に伴う危険が現実化したと認められるかどうかが重要になります」(安部氏)
過去の大規模災害でも、地震による被害について、業務との関連性が認められたケースでは労災認定が行われています。
一方で、休日や勤務時間外など、業務との関連性が認められない場合には、労災保険の対象とはなりません。
「災害発生時は、従業員が出勤中だったのか、勤務中だったのか、避難や救助活動が業務上の行動だったのかなど、状況によって判断が分かれます。事業主側で『対象外』と決めつけず、事故の事実関係を整理したうえで、労働基準監督署に相談することが大切です」(安部氏)
社会保険料・労働保険料の納付猶予など
過去の大規模災害では、被災した事業主に対して、社会保険料や労働保険料について特例措置が講じられた例があります。
具体的には、
・労働保険料の申告・納付期限の延長
・標準報酬月額の特例改定
などがあります。
安部氏は「災害によって事業活動が大きく縮小し、従業員の給与水準が変化した場合には、社会保険手続きにも影響する可能性があります。今回の地震についても、今後、関係機関から特例措置が発表された場合には、対象となる事業者は積極的に活用を検討することをお勧めします」と言います。
