「お金を貯めても、意味がなかったな」…人生を諦めかけた女性
「お金を貯めても、意味がなかったなって。一時は、自分の人生を諦めかけたこともありました」
そう振り返るのは、会田由美子さん(69歳・仮名)。
年金暮らしに入る前は、老後の過ごし方をあれこれ考えていたものでした。忙しく働いてきた現役時代が終わったら、旅行や趣味など、夫婦で好きなことをして暮らす――そんな日々を夢見ていました。
現役時代から老後に備えて貯蓄や投資を続け、夫婦の金融資産は約7,200万円。住宅ローンも完済し、「お金の心配はしなくていい」という状態。老後への準備は万端でした。
ところが、65歳を迎えてすぐ、実母が倒れ、介護がスタート。母親が自宅での生活を望んだため、由美子さんが身の回りの世話を引き受けることになりました。
「食事や洗濯、通院の付き添いなんかに追われる毎日。夫婦で出かけることなんて、夢のまた夢でした」
しかし介護生活が1年を過ぎたころ、由美子さんはある思いに駆られました。
「介護って『ここで終わり』という先が見えないんですよね。母は当時89歳。あと3年なのか、5年なのか、10年なのか……。夫と楽しむために貯めた老後資金も使いどころがないんです。自分の人生が終わったような気持ちになってしまって。これで本当にいいのかなって」
母が亡くなるまで自分で面倒を見るという考えも頭にあったという由美子さん。しかし、介護する側にも人生があります。悩んだ結果、夫とも話し合い、母親の施設入所を決断しました。
母親も、由美子さんの苦悩がわかったのかもしれません。「あなたが楽になるなら、それがいい」と受け入れてくれました。施設に入ったあとも面会に通い、できる範囲で母親を支えています。
「一時は『お金を貯めても意味なかった』なんて思いましたが、やっぱりあってよかった。母を預けたら時間の余裕ができて、やっと旅行もできるようになったんですよ」
自分たちの老後のために準備してきた約7,200万円は、母の施設入居にも役立ちました。
「施設に入れることを、最初は『自分が母を見捨てること』のように感じていました。でも、今は違います。介護を専門家にお願いすることで、母との関係を壊さずに済むかもしれない。私も、私の人生を生きていいんだと思えるようになりました」
