手厚い年金と十分な退職金があるから、自分たちは大丈夫――。しかし、近年の物価高や将来への焦りから、思わぬ落とし穴にはまるケースが増えています。ある元公務員夫婦の事例から、豊かな老後を脅かす落とし穴と、大切な資産を守るために欠かせない備えについて考えます。
「うちは、そこらの年金生活者とは違う」〈年金月40万円〉〈退職金5,000万円〉70代元公務員夫婦、元同僚を信じて2,000万円を投資…老後資金に異変 ※写真はイメージです/PIXTA

安泰の老後のはずが、将来に一抹の不安

佐々木茂さん(74歳・仮名)と妻の恵子さん(72歳・仮名)は、ともに地方公務員として定年まで勤め上げました。

 

退職時に受け取った退職金は、夫婦合計で約5,000万円。現在の年金収入も、夫婦合わせて月約40万円、手取りで34万円ほどあります。

 

「うちは、そこらの年金生活者とは違う、お金を持っているという自負はあった」

 

茂さんはそう振り返ります。

 

総務省『令和7年地方公務員給与実態調査』によると、地方公務員(一般行政職)の平均給与は41万3,968円、全職種の平均は42万8,589円。また一般行政職の平均定年退職金は、25年以上勤続した定年退職者の全国平均で2,226万5,000円でした。

 

一般的に定年退職後は収入減に見舞われるため、ライフスタイルを見直す人が多いものです。しかし夫婦は退職後も生活水準をほとんど変えなかったといいます。

 

月2回ほど外食をし、夫婦それぞれの車を維持して買い換えました。

孫への小遣いや祝い金をケチることもありませんでした。

茂さんはゴルフ、恵子さんはガーデニングと、趣味にもお金を惜しみませんでした。

 

月々の生活費は30万~40万円。ときには貯金を取り崩すこともあったそうです。

 

「このあたりは、お役所勤めの公務員が一番のエリートという土地柄でね。噂もすぐに広まる。定年後に質素倹約に舵を切ったなら、『あの家は退職した途端に生活が苦しくなった。大丈夫か?』という具合に噂されるのを恐れた」

 

そのような土地柄もあり、定年後も現役時代のライフスタイルを続けることが当たり前だったと振り返ります。

 

だからといって、将来に不安がなかったわけではありません。

 

「ここ2、3年は、生活自体は変わっていないのに、お金がかかるようになった。このままインフレが続いたら、お金は足りるのか……将来への不安が漠然と強くなりました」