「今年こそ北海道へ」68歳夫婦が楽しみにしていた夏の旅行
「夏は、夫婦で旅行するはずでした。仕事をしていたころは長い休みも取りにくかったので、退職したら少しずつ出かけようと話していたんです」
明美さん(仮名・68歳)は、夫の和彦さん(仮名・69歳)と郊外の戸建てで暮らしています。
夫婦の年金は合わせて月約28万円。住宅ローンは完済しており、預貯金は約3,500万円あります。和彦さんが65歳で仕事を完全に辞めてからは、年に2回ほど国内旅行をするようになりました。
この年の夏は、北海道を5日ほど巡る予定でした。
「暑い時期を避けて北海道に行こうって。7月の終わりから宿を調べていました」
ところが、予約しようとしていた矢先、43歳の息子・翔太さん(仮名)から連絡がありました。
「今年もお盆、みんなで帰るよ。12日から16日くらいかな」
翔太さんは妻と、小学生の子ども2人の4人暮らし。新幹線で約3時間離れた場所に住んでいます。
明美さんは少し迷ってから、旅行の話をしました。
「そのあたり、お父さんと旅行に行こうと思ってたのよ」
すると翔太さんから返ってきたのは、思いがけない言葉でした。
「え、今年は家にいないの?」
責めるような言い方ではなかったそうです。それでも明美さんは、「じゃあ旅行はずらそうか」と答えました。
毎年、息子一家はお盆に4~5日ほど泊まっていました。
孫が来ること自体は楽しみでした。普段は静かな家が一気ににぎやかになり、和彦さんも孫と遊べる日を心待ちにしています。
ただ、迎える準備は年々負担になっていました。
客用布団を干し、シーツを洗う。冷蔵庫をいっぱいにして、朝昼晩の食事を考える。孫が退屈しないよう外出先も調べます。
以前は明美さんがほとんど一人でこなしていましたが、60代後半になってからは、5日間の滞在が終わると翌日は何もしたくないほど疲れるようになりました。
厚生労働省『2024(令和6)年国民生活基礎調査』によると、65歳以上の人がいる世帯のうち「三世代世帯」は6.3%です。1986年には44.8%を占めていましたが、現在は親世代と子世代が別々に暮らす世帯が一般的になっています。離れて暮らしているからこそ、帰省の時期に家族がまとまって過ごす家庭もあります。
旅行は9月にずらすことにしました。
しかし、今度は和彦さんの通院予定と重なり、結局その年の北海道旅行は見送ることになりました。
