築40年の木造アパートを売却したら、突然「税務署」から“お尋ね”が届いたワケ【税理士が解説】
原状回復費用は貸主と借主、どちらが負担する?
そもそも原状回復義務とは、借主が賃貸住宅を退去する際に、入居時の状態に戻して貸主であるオーナーに返す責任のことを意味しています。もっとも、歳月の経過によって自然に生じた傷みや不具合については「経年劣化」とみなされ、借主は原状回復義務を負わず、オーナーが費用を負担して原状回復を行うことになります。
実は、この「経年劣化」に該当しなくても、「通常損耗」に該当するとみなされた場合には、やはりオーナーが原状回復のための費用を負担しなければなりません。「通常損耗」とは、通常の生活を送るなかで生じてしまった物件の損傷のことを指しています。
長く生活を続けてきた結果として、床板や壁などに軽度の汚れや傷が生じてしまうことは珍しくありません。これらはいずれも、「通常損耗」の範疇とみなされるのです。
国土交通省が1998年に公表したガイドラインでは原状回復について、
と定義しています。要は、通常の暮らしのなかで生じた汚れや傷みに関して、借主は回復の責任を負わないということです。
一方、借主が故意につけた傷などの痛みは「特別損耗」と呼ばれ、借主が原状回復義務を負います。ただし、本来なら「通常損耗」とみなされるものであっても、たとえば「退去時にクロスを貼り替える」などといった原状回復特約が賃貸借契約において、貸主・借主合意のもとで交わされていれば、借主が費用を負担することになります。
