(※写真はイメージです/PIXTA)

長年連れ添った夫婦でも、退職をきっかけに関係が変わることがあります。厚生労働省『人口動態統計(令和5年)』によれば、婚姻期間20年以上の離婚は全体の約2割を占めています。

夫の退職後…「家にいるのに、休まらない」

「周りからは、仲のいい夫婦だと言われていたんです」

 

そう話すのは、埼玉県内に住む美紀さん(仮名・58歳)です。夫の浩一さん(仮名・60歳)はこの春、勤めていたメーカーを定年退職しました。退職金は約2,300万円。住宅ローンはすでに完済しており、子ども2人も独立しています。

 

近所では、買い物に一緒に出かける姿や、休日に並んで散歩する様子を見て、「おしどり夫婦ですね」と声をかけられることも少なくありませんでした。美紀さん自身も、夫が退職したら少しゆっくり旅行をしたり、平日に外食を楽しんだり、そんな穏やかな生活が始まるのだと思っていたといいます。

 

ところが、夫が毎日家にいるようになってから、空気は少しずつ変わり始めました。

 

最初は些細なことでした。

 

「今日の昼ごはん、これだけ?」

「洗濯、まだ回してないの?」

「掃除は午前中に済ませた方がいいんじゃないか」

 

夫に悪気があったわけではない、と美紀さんは言います。会社員時代には家のことが見えていなかったぶん、退職して初めて気づいたことを口にしていただけなのかもしれません。

 

ただ、それが毎日続くと話は別でした。これまで一人でこなしてきた家事の手順や、昼間の過ごし方にまで口を出されるようになり、美紀さんは少しずつ息苦しさを感じるようになります。

 

「ずっと監視されているみたいだったんです」

 

夫は退職後、趣味もなく、再就職の予定もありませんでした。朝からテレビをつけ、昼食の時間になると台所に来て、夕方には「今日は何時にご飯?」と聞く。家にいる時間が増えたことで、夫婦の接点が増えたというより、逃げ場がなくなった感覚に近かったといいます。

 

美紀さんは結婚後、パートをしながら子育てと家事を担ってきました。子どもが独立した後も、地域の知人と会ったり、一人で買い物に出かけたりしながら、自分なりの生活のリズムを保っていました。

 

しかし夫の退職後は、そのリズムが崩れます。

 

「ちょっと出かけるだけでも、『どこ行くの』『何時に帰るの』と聞かれるんです」

 

夫にとっては世間話のつもりでも、美紀さんには確認や詮索のように感じられました。しかも夫は、退職金が入った安心感からか、「これからは二人でゆっくりすればいい」「家にいてくれる方が助かる」と口にするようになったといいます。

 

「私の時間まで、全部“夫婦の時間”にされてしまうように感じました」

 

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