(※写真はイメージです/PIXTA)

配偶者の収入に依存した生活は、安定しているように見えても、その前提が崩れた瞬間に大きく揺らぎます。とくに長年専業主婦として家庭を支えてきた場合、再就職のハードルは決して低くありません。想定していなかった「もしも」に直面したとき、生活はどのように変わるのか――その現実が問われる場面は、誰にでも起こり得ます。

「あなたが働いているから大丈夫」…すれ違いから始まった崩壊

「履歴書の職歴欄を見て、手が止まりました」

 

そう話すのは、関東地方に住む山口真理子さん(仮名・52歳)です。

 

真理子さんは20代で結婚し、その後は専業主婦として家庭を支えてきました。夫は会社員で、家計は夫の収入が中心。住宅ローンはすでに完済しており、生活費はおおむね月22万円ほどでした。

 

「贅沢をしていたつもりはありません。でも普通に暮らしているだけで、それくらいはかかっていました」

 

子どもはすでに独立し、夫婦2人の生活。家事はすべて真理子さんが担い、夫は仕事に専念するという役割分担が続いていました。

 

ただ、夫は数年前から将来の生活について口にすることが増えていました。

 

「このままで老後は大丈夫なのか」

「年金だけでやっていけるのか」

 

そうした問いに対し、真理子さんは深く考えずにこう返していたといいます。

 

「なんとかなるんじゃない?」

「あなたが働いているから大丈夫でしょ」

 

「今思えば、全部夫任せでした」

 

あるとき、夫はファイナンシャルプランナー(FP)に相談に行きました。老後の生活費や年金見込み額をもとに、将来の家計を試算したといいます。

 

その結果は、厳しいものでした。

 

「このままだと、老後は毎月赤字になる可能性が高いと言われたそうです」

 

総務省『家計調査(2024年)』によれば、高齢夫婦のみの無職世帯の平均支出は月約25.6万円。一方で、年金収入だけではそれを下回るケースも多く、差額は貯蓄の取り崩しで補う必要があります。

 

夫はその試算結果を真理子さんに見せ、支出の見直しや働き方について話し合おうとしました。

 

しかし――。

 

「正直、ピンときていませんでした」

 

日々の生活に困っている実感がなかったため、危機感を持てなかったといいます。

 

「まだ先の話だと思っていました」

 

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