築40年の木造アパートを売却したら、突然「税務署」から“お尋ね”が届いたワケ【税理士が解説】
賃借人は修繕工事を拒否できるか?
1.賃貸人の修繕義務
賃貸人は、民法第606条第1項に基づき、物件の使用・収益に必要な修繕をする義務(修繕義務)を負います。そのため、賃貸している物件の使用・収益に悪影響をおよぼすような雨漏りや土台・柱の損傷等をしている部分がある場合、賃貸人は、当該部分を修繕しなければなりません。
2.賃借人の修繕工事受忍義務
上述のとおり、物件の修繕は「貸主の義務」とみなされます。一方で、「貸主の権利」という側面もあります。貸主は、物件の所有者であるため、物件の修繕を行うことは、所有物の状態を維持するという点、物件の基本的な安全性を確保するという点(物件の所有者は、民法第717条第1項の責任を負っています)でも意義があるためです。
しかしながら、この貸主の権利という側面は、上述した民法第606条第1項ではカバーされていません。
そこで、民法第606条第2項において「賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない」との定めが設けられており、賃貸人が「保存に必要な行為」をする場合、賃借人は当該行為(修繕工事)を受忍する義務を負います。
そして、当該行為(修繕工事)のために物件を一時的な明渡しが必要である場合、賃借人は、賃貸人に対し、物件を明け渡す必要があります(明渡しが必要でない場合には、明け渡すことまでは不要です。東京地方裁判所昭和43年3月4日判決(昭和40年(レ)第395号)。
ここでいう「保存に必要な行為」とは、物件の現状維持を目的とする行為であるとされています(民法第103条第1号。最高裁判所昭和30年5月13日判決(民集9巻6号697頁))。そのため、現状維持に必要のない修繕工事についてまで賃借人が受忍義務を負うものではありません。どのような修繕工事が物件の現状維持を目的とする行為であるかは、物件の状況等の客観的事情から判断されます。
たとえば、改築目的での修繕工事につき、当該事案では改築を要するほどの大修繕の必要はないとし、実質的に賃借人が改築目的での修繕工事の受忍義務を負わないとした裁判例として、上記東京地方裁判所昭和43年3月4日判決があります。
まとめると、賃借人は、①物件の現状維持を目的とする修繕工事を拒むことができず、②修繕工事のために必要があれば物件を明け渡さなければならないということです。
修繕工事を拒否されないために…賃貸借契約書に特約は必要?
賃貸借契約書に賃貸人が修繕工事をすることができる旨の条項が設けられていない場合でも、賃借人は修繕工事を受忍する義務を負っていると考えてよい場合がほとんどです。上述のとおり、民法において定めが設けられているためです。
そのため、基本的に、賃貸人は、特約がなくても修繕工事を実施する権利があるといえます。ただし、賃貸借契約書の内容によっては、修繕工事の実施内容・方法等に影響が生じる場合もあります。したがって、内容をよく確認のうえ対応するよう、ご注意ください。

