特養に入居し一安心…と思いきや
「母はずっと一人暮らしだったんです。78歳になるまで、なんとか自宅で生活していました」
そう話すのは、関東在住の会社員・田中さん(仮名・50代)です。
母の芳子さん(仮名・78歳)は長年一人暮らしを続けていました。しかし自宅で転倒したことをきっかけに体力が落ち、認知症の症状も少しずつ進行。要介護3の認定を受け、自宅での生活は難しくなりました。
「仕事をしながら在宅介護をするのは現実的に難しくて…。母の年金も月14万円ほどだったので、特養を探すことにしました」
特別養護老人ホームは、主に要介護3以上の高齢者が入居対象となる公的施設です。所得に応じて利用料が軽減されることもあり、多くの家族が検討する施設でもあります。
厚生労働省『特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)』によると、特養への入所申込者は全国で約29.2万人。そのうち約11.6万人は自宅で入所を待っている状況とされています。
「運よく空きがあった施設に入れたんです。正直、ほっとしました」
入居から半年ほどが経ったころ、田中さんのもとに母から電話がかかってきました。
「助けて……」
電話口の声は弱々しく、泣いているようにも聞こえたといいます。
「何かあったのかと思って、すぐ施設に向かいました」
施設で母の部屋に入った瞬間、田中さんは違和感を覚えました。
「部屋が荒れているというほどではないんですが、食べ終わった容器がそのままだったり、ゴミ箱にティッシュがたまっていたりして…」
芳子さんの髪も整えられておらず、同じ服を着続けているようでした。入浴の回数も減っていたようで、体も以前より痩せて見えたといいます。
「母は『最近あまりお風呂に入れていない』と言っていました」
田中さんは不安になり、施設の職員に状況を尋ねました。
「人手が足りないんです」
施設側の説明はこうでした。
入所者の要介護度が高く、見守りや介助が必要な人が多い一方で、職員数が不足しているため、ケアが十分に行き届かない場面があったというのです。
「特養は重度の方が多いので、どうしても手が回らないことがあると言われました」
