(※写真はイメージです/PIXTA)

老後資金については「できるだけ貯めるべき」という考え方が広く知られています。しかし一方で、退職後の時間をどう過ごすかという視点から、人生の後半でお金を使うことを選ぶ人もいます。とはいえ、高齢期の家計は年金が主な収入になるケースが多く、支出とのバランスを誤ると生活が厳しくなる可能性もあります。総務省『家計調査(2024年)』によると、65歳以上の単身無職世帯の平均消費支出は月およそ15万円で、年金収入だけでは不足する世帯も少なくありません。老後のお金は「残すか」「使うか」のどちらかではなく、そのバランスが重要だとされています。

70代で決めた世界一周

「一度くらい、世界を見てみたかったんです」

 

そう話すのは、神奈川県内で一人暮らしをする中村洋子さん(仮名・74歳)です。洋子さんの年金収入は月8万円ほど。夫はすでに他界しており、現在は公営住宅で一人暮らしをしています。

 

転機となったのは、数年前に母が亡くなったことでした。

 

相続で受け取った遺産は約800万円。洋子さんは長い間、そのお金をどう使うか考えていたといいます。

 

「貯金にしておくべきかもしれないとは思いました。でも、 “自分の夢のために使ってみたい”とも思ったんです」

 

そのとき思い浮かんだのが、若い頃から憧れていた世界旅行でした。

 

旅行会社のパンフレットを見たとき、洋子さんは驚きました。世界一周ツアーは数百万円。長期間のクルーズや各国を巡るパッケージ旅行もありました。

 

「最初は夢みたいな話だと思いました」

 

それでも、考え続けるうちに「今しかできないかもしれない」という思いが強くなったといいます。

 

最終的に選んだのは、約4ヵ月で複数の国を巡る世界一周ツアーでした。費用は航空券や宿泊費、現地ツアーなどを含め、合計でおよそ800万円。

 

旅行中の記憶は、いまでも鮮明だといいます。ヨーロッパの街並み、南米の遺跡、クルーズ船から見た夕焼け。

 

「夢みたいでした」

 

ツアーで出会った人たちと食事をし、各地の景色を写真に収めました。

 

「こんな経験ができるなんて思っていませんでした」

 

帰国したとき、洋子さんは「やりきった」という気持ちだったといいます。

 

しかし、生活に戻ると状況は変わりました。

 

洋子さんの収入は、年金月8万円が中心です。家賃は公営住宅で抑えられているものの、光熱費や食費、医療費を支払うと、余裕はほとんどありません。

 

「旅行中は考えないようにしていました」

 

ただ、帰国してしばらくすると、現実がはっきり見えてきたといいます。

 

 \3月20日(金)-22日(日)限定配信/
 調査官は重加算税をかけたがる 
相続税の「税務調査」の実態と対処法

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