私の人生って何なの?遺産の大部分〈6,750万円〉が姉の元に…泊まり込みで介護をし続けた60代女性。98歳母が作成した遺言書を思わず二度見したワケ【相続の専門家が解説】

私の人生って何なの?遺産の大部分〈6,750万円〉が姉の元に…泊まり込みで介護をし続けた60代女性。98歳母が作成した遺言書を思わず二度見したワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

被相続人(親)の財産の維持・増加に貢献した人が、遺産分割時にその貢献分を考慮して多く遺産を受け取ることができる「寄与分」という制度。しかしながら、実際には介護をしていた相続人が報われないケースも少なくありません。そこで本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が具体的な事例をまじえて、公平な相続を実現するために活用すべき「公正証書遺言」と「代償金」について解説します。

父親の財産は母親が相続

久美子さん(60代女性・仮名)は父親が亡くなり、今年の3月で10年を迎えます。相続人は母親と姉、兄、久美子さんの4人でした。

 

父親の財産は自宅とアパート、預貯金で約1億円程。兄は生前贈与を受けていることから、相続を辞退。姉と久美子さんも、母親の老後の生活を優先したので、全財産を母親が受け取り、配偶者の税額軽減を適用して納税はありませんでした。

母親は98歳。泊まり込みで面倒をみている

一人暮らしになった母親は、姉に同居してほしいと思っています。そして、長男、長女と年上から順に家を継いでもらいたい希望があるようです。

 

ところが、長男は妻の家族と同居を始めたので、実家に戻る気はないことがはっきりしています。長女は結婚してかなり離れたところで生活をしており、簡単には帰ってこられません。結果的には結婚しても同じ市内に住む久美子さんが実家に通って母親のサポートをしてきました。

 

3年ほど前からは母親を一人にしておくと転倒などの突発的なことに対応できないため、久美子さんが毎日泊まり込みで面倒をみているといいます。

母親は公正証書遺言を作成した

母親は、父親の相続の手続きが終わってすぐに公正証書遺言を作成しました。今回は父親の財産はいらないとした長男ですが、自分の相続のときに主張されると娘たちは勝ち目がないという気持ちで、遺言書にしておくということでした。

 

それには「不動産は長女に、金融資産を長女、次女が等分に。長男には渡すものはない」という内容でした。遺言執行者は久美子さんになっています。

 

母親の気持ちは長女に実家に戻って家を継いでもらいたいという気持ちだったようですが、現状では、長女が実家に戻ることはなさそうです。そればかりか、遠いということもあり、母親の介護も久美子さん一人が担っているのです。

寄与分はどうなる?遺留分は?

最近では母親もようやく現状を理解したようで、家は久美子さんに継いでもらいたいと言い出すようになったといいます。なので、これからどういう手続きをとればいいでしょうか? というのが、久美子さんからのご相談でした。

 

母親の財産は自宅とアパート。評価を確認すると、自宅は2,500万円、アパートは4,000万円。預金は500万円ほどしかないといいます。仮に遺言書を作りかえないとすると、姉の相続分が6,750万円、久美子さんは預金の半分の250万円となります。

 

これではとても理不尽で、姉に遺留分請求するとしても法定割合3分の1となると1,166万円。介護をひとりで引き受けている久美子さんとしては納得できないといいます。「私の人生って一体なんなの?」とついこぼしたくなるといいます。こうした不公平感も解消したいということでした。

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