元気だった父が突然他界。残された聖子さん(54歳)と姉(60歳)、そして介護施設にいる母(80歳)は、父の遺産をどう分けるか悩むことに。姉は実家の土地を相続しアパートを建てる計画ですが、代償金の分割払いを提案され、聖子さんは不安を感じています。こうした場合、どう対処すればよいのでしょうか? 相続実務士の曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
元気だった父親が急に亡くなった
聖子さん(54歳)の84歳の父親が亡くなり、母親(80歳)と姉(60歳)の3人で相続手続きをすることになりました。姉も聖子さんも結婚して実家を離れていますので、両親は2人暮らしをしてきました。
数年前に母親のほうに病気が見つかり、入院、手術などを重ねてきました。昨年には介護系のホームに入ってしまい、父親が1人暮らしとなっていました。
父親も聖子さんたちも、母親のほうが父親よりも先に亡くなると思っていました。しかし、元気で1人暮らしをしてきた父親が急に亡くなってしまったのです。
母親名義にするデメリット
父親の財産は自宅の土地で、評価が1億円。建物は築50年で価値はないものの固定資産税の評価は80万円。預金が1,500万円ですので、相続税の申告が必要になり、相続税もかかります。
遺言書はありませんので、3人で遺産分割協議をして相続の仕方を決めないといけません。母親が全部を相続して配偶者の特例を適用すれば納税は不要になります。
姉からの分割案
しかし、姉からは空き家の自宅を解体してアパートを建てるという話をされました。母親はおそらく、ホームから戻れません。
姉も聖子さんもそれぞれ持ち家に住んでいますので、自宅を母親が相続しても二次相続では居住用の小規模宅地等の特例は使えません。相続人が1人少なくなる分、今回の相続税より増えてしまうことは明らかです。
そうした状況があり、また母親が認知症になるリスクもあるため、今回は母親には相続せずに姉が相続してアパートを建てるそうです。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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