私の人生って何なの?遺産の大部分〈6,750万円〉が姉の元に…泊まり込みで介護をし続けた60代女性。98歳母が作成した遺言書を思わず二度見したワケ【相続の専門家が解説】

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(※写真はイメージです/PIXTA)

被相続人(親)の財産の維持・増加に貢献した人が、遺産分割時にその貢献分を考慮して多く遺産を受け取ることができる「寄与分」という制度。しかしながら、実際には介護をしていた相続人が報われないケースも少なくありません。そこで本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が具体的な事例をまじえて、公平な相続を実現するために活用すべき「公正証書遺言」と「代償金」について解説します。

親の介護をした相続人の「寄与分」について

寄与分とは?

寄与分とは、相続人の中で特に被相続人(親)の財産の維持・増加に貢献した人が、遺産分割時にその貢献分を考慮して多くの遺産を受け取ることができる制度です(民法904条の2)。

 

介護による寄与分が認められるケース

以下のような場合、介護による寄与分が認められる可能性があります。

 

1. 無償で長期間介護を行った場合

  • 介護サービスを利用せず、相続人が自ら日常的に介護を行っていた。
  • 例えば、「数年間にわたり、施設に入れずに同居しながら介護をしていた」。

 

2. 介護費用を自己負担した場合

  • 施設入所費用や医療費を相続人が自己負担していた場合、寄与分として考慮される。

 

3. 訪問介護などを積極的に行い、費用削減に貢献した場合

  • 介護サービスを使わず、相続人が介護を行った結果、財産の減少を防いだ。
  • 例えば、「毎日実家に通い、介護費用をかけずにケアしていた」。

 

4. 仕事を辞めたり、収入を減らしてまで介護した場合

  • 相続人が自分の仕事をセーブし、親の介護に専念した場合も考慮される。

 

遺産分割協議で寄与分を主張できるか?

寄与分は、遺産分割協議で主張することが可能です。ただし、以下の点に注意が必要です。

 

1. 他の相続人と協議が必要

  • 寄与分を主張する場合は、他の相続人との話し合い(遺産分割協議)で合意を得る必要がある。
  • 証拠がないと認められにくいため、介護の記録や支出の明細を準備すると有利。

 

2. 合意できない場合は家庭裁判所に申立てが可能

  • 他の相続人が寄与分を認めない場合は、家庭裁判所に「寄与分の審判」を申し立てることができる。
  • 裁判所が寄与分の金額を決めるため、介護の具体的な貢献度を示す証拠が必要。

 

介護の寄与分を証明するためのポイント

寄与分を認めてもらうためには、証拠が重要になります。以下のような資料を用意しておくと、主張が通りやすくなります。

 

介護日誌

 → 介護した期間・内容・頻度を記録(例:「週5回、自宅で食事介助と入浴介助をした」)。

 

医療費・介護費の領収書

 → 自己負担した費用を示すために領収書を保管。

 

介護の証言

 → 近隣住民やヘルパーの証言を得る(「この人が中心になって介護をしていた」など)。

 

勤務記録(仕事をセーブした証拠)

 → 介護のために退職・減収した場合、会社の証明書などを提出。

 

介護をしていた相続人が不利にならないために

実際の遺産分割では、介護をしていた相続人が報われないケースも多いです。

 

対策として、以下の方法を検討するとよいでしょう。

1. 親が生前に「遺言書」を作成する

  • 「○○には介護の貢献があるため、遺産の○%を相続させる」などと記載してもらう。
  • 公正証書遺言にしておくと、トラブル防止になる。

 

2. 親と「死因贈与契約」を結ぶ

  • 生前に、親と「介護をする代わりに○○の財産を相続する」という契約を結ぶ。

 

3. 生前贈与や家族信託の活用

  • 親が元気なうちに、生前贈与や家族信託を活用して財産を移転する。

まとめ

  • 親の介護をした相続人は「寄与分」を主張できるが、証拠がないと認められにくい。
  • 遺産分割協議で合意を目指し、それが難しい場合は家庭裁判所に申立てをする。
  • 介護の負担を公平に評価してもらうため、証拠を準備することが重要。
  • 生前に遺言や契約を活用することで、スムーズに相続対策ができる。

 

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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