父親名義の家に住んでいる
香波さん(47歳)は父親(80歳)が建ててくれた家に家族で住んでいます。実家は両親と弟家族が住んでいて、いずれ弟が相続する約束です。両親は父親の仕事の関係で、現在の家に引っ越して20年以上になります。現在、香波さん家族が住んでいる家はその前の家で、父親が祖父から相続したものでした。香波さんもその家で生まれ育っていますので、馴染みのある地域です。
税理士のススメで親に家賃を
結婚して実家を離れた香波さんですが、両親たちが引っ越して家が空いていたこともあり、子供が学校に入るタイミングで元の実家に引っ越しをしました。父親が古い家を壊し、香波さん家族が住むための家を建ててくれたのです。
父親の税理士に勧められ、相続のときには貸家として評価したほうが有利なので、香波さんが父親に家賃を払うほうが良いと言われて、毎月12万円を父親に払っています。そのまま10年が経ちました。
父親が80歳になり、相続のことも気になると、香波さんが相談に来られました。
土地の評価は香波さんの家が高い
父親の財産は2ヵ所の不動産と金融資産などで、試算すると相続税が3,000万円近くかかります。しかし、小規模宅地等の特例や配偶者の特例を利用すると納税はしなくてもよいことになります。
現在の父親の自宅の面積は、香波さんの住む土地の倍の広さがありますが、評価額では香波さんの住む土地の3分の2ほど。香波さんの住む家を賃貸住宅とすれば、貸付用の小規模宅地等の特例が使えますが、200㎡まで50%減。父親の家は330㎡まで80%減となり、どちらも同じ程度の減額となります。
相続税のほうが安い!
仮に香波さんが家賃を払わずに住む使用貸借とした場合、父親の自宅の小規模宅地等の特例を適用することになりますが、相続税は1,500万円。香波さんが相続するのはそのうち約60%ですので、相続税は900万円となります。
ところが家賃はすでに10年で1,440万円も払っていて、父親は所得税を払っていますので、目減りしていることになります。父親はまだ元気なので、仮にこれから10年家賃を払い続けると計2,880万円を父親に払い、所得税も払い続けるのです。
そうなると、家賃を払って小規模宅地等の特例を受けるよりも、相続税を納税するほうがはるかに安いことになります。
税理士のおすすめは最良ではない
これでは相続対策の意味はないとなりますので、今からでも相続対策の方針を見直して、切り替えたほうがいいとアドバイスしました。税理士のおすすめは香波さんの場合は最良ではないと言えます。
相続実務士のアドバイス
●できる対策⇒父親の相続対策のプランを練り直す。父親に家賃を払う効果よりも相続税のほうが得策。遺言書で住んでいる家を相続できるように指定してもらう。
●注意ポイント⇒父親の金融資産を確認して現在の財産についてのプランをする。確定申告でどれくらいの所得税を払っているかも判断材料とする。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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