俺が継ぐはずだったのに…嫁姑問題のもつれで家を飛び出した長男一家。〈財産評価額10億円超〉地主一家・次男の受難「こんなはずでは」【相続の専門家が解説】

俺が継ぐはずだったのに…嫁姑問題のもつれで家を飛び出した長男一家。〈財産評価額10億円超〉地主一家・次男の受難「こんなはずでは」【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

家族の歴史とともに受け継がれてきた土地や財産。しかし、その継承の過程で発生する感情的な衝突は、しばしば家族関係に深い亀裂を生じさせます。特に、跡継ぎが「予定通りではない」とき、あるいは「自分が選ばれなかった」とき、そこに生じる感情は非常に根深いものとなります。相談に来られた斉藤家(仮名)の実際の相続問題のケースを交えながら、跡継ぎ問題の本質と、その解決策について相続実務士の曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。

跡継ぎ問題の背景にあるもの

多くの資産家の家庭では、財産を守ることを目的として、長男や特定の子供を「跡継ぎ」として育てることが一般的です。しかし、時代の変化とともに、必ずしも家業を継ぐ意志がない、または能力的に適任ではない場合もあります。そのような状況で、別の子供が家を継ぐことになると、他の家族からの反発を招くことが少なくありません。

 

また、財産分与の公平性に対する認識の違いも、家族間の争いを引き起こします。「自分は長年家業を支えてきたのに、なぜ平等に分けられるのか」「兄は十分な財産をもらっているのに、なぜさらに優遇されるのか」といった不満が積み重なることで、相続の場面で感情的な対立が顕在化するのです。

具体的な事例:斉藤家のケース

今回の事例では、土地持ち資産家である斉藤家において、長男ではなく次男が跡継ぎとして選ばれたことが家族内の大きな争いを生む原因となりました。斉藤家は代々多くの土地を所有する地主の家系で農家でもあります。斉藤さんの父親は長男で祖父から20か所以上の市街化区域の土地と農地を相続し、財産評価は10億円以上。地方都市ながら、近くに大学があり、所有する土地に賃貸アパートや寮を建てて、賃貸事業をしており、安定的な収入があります。

 

父親の相続人は、母親と長男、長女、次女、次男の斉藤さんの5人です。長男は跡取りだと言われて祖父母や両親から育てられたにも関わらず、結婚した妻にはそれが重圧だったよう。同居したものの、両親との関係が悪化し、同居を解消。長男は家や両親よりも妻を優先せざるを得ない状況のため、最良の選択として選択されたのですが、妻を追い込んだのは両親や妹、弟たちだと家族を責めるようになりました。

 

長男家族が同居を解消したあと、両親の強い希望により、次男の斉藤さん家族が跡取りとして同居を始めましたので、両親も姉たちも安心してくれているのですが、長男だけはそれが許せないようです。長男は自分が家を継ぐ跡取りではないということが現実になると、弟に対して嫌がらせをするまでになりました。昨年、父親が亡くなり、遺言書があるものの、その内容で長男が納得しないため、斉藤さんが相談に来られたのでした。

 

当社では長男にも理解が得られる遺産分割を提案し、長男をはじめ、母親、姉たちも同意が得られて、遺産分割協議書を作成することができるめどを作ることができました。父親の相続手続きは終えられそうですが、母親の二次相続でも今回と同様に長男が難色を示すことが想定されます。母親は80代ですが、まだ何年も先の相続になると、その間の長男がまた、嫌がらせをしなくもありません。

 

よって、母親には遺言書が必須ですが、その前に長男に財産の前渡しとして現金か不動産を贈与して、将来の相続でまた感情的な問題にならないよう、生前に相続問題を解決しておくことをご提案しました。長男に満足のいく財産を先渡しし、遺留分放棄をしておいてもらうことで、母親の相続時には遺言書のみでスムーズな手続きをすることを想定しています。

 

今回の斉藤家のように、代々の土地を多く所有している資産家は「家を継ぐ」ことを優先する傾向にあることで、家族の課題を抱えていくこともあると痛感した事例です。できるだけ家族でコミュニケーションを取り、不満が残らないような選択をしていく必要があります。

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