Ⅱ 最近の危機管理・コンプライアンスに係るトピックについて
執筆者:木目田 裕、宮本 聡、西田 朝輝、澤井 雅登、寺西 美由輝
危機管理又はコンプライアンスの観点から、重要と思われるトピックを以下のとおり取りまとめましたので、ご参照ください。
なお、個別の案件につきましては、当事務所が関与しているものもありますため、一切掲載を控えさせていただいております。
【2024年6月25日】
経済産業省、「企業情報開示のあり方に関する懇談会 課題と今後の方向性(中間報告)」を公表
https://www.meti.go.jp/press/2024/06/20240625001/20240625001.html
経済産業省は、2024年6月25日、同省が設置した「企業情報開示のあり方に関する懇談会」がまとめた、日本企業の情報開示の課題と今後の方向性に関する中間報告書を公表しました。
本報告書は、今後の情報開示の在り方として、①会社法に基づく事業報告・計算書類等、金融商品取引法に基づく有価証券報告書及び証券取引所上場規程に基づくコーポレート・ガバナンスに関する報告書について、一体開示を目指していくこと、②事業報告・計算書類等を含む法定開示書類について、定時株主総会の十分前に開示されるようにすること、③法定開示書類について、日本語・英語両方での開示を進めていくこと、④AI等を用いて報告書が読まれることが増えてきていることを踏まえ、開示書類について、XBRL形式でタグ付けを行うことにより、情報収集の容易性、機械可読性を向上させること等の意見を挙げています。
【2024年6月26日】
政治資金規正法の一部を改正する法律が公布
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/213/pdf/s0902130132130.pdf
2024年6月26日、政治資金規正法の一部を改正する法律が公布されました。
本改正においては、例えば、以下の項目について改正が行われています。
●国会議員関係政治団体の代表者の責任の強化(会計責任者の監督義務、会計帳簿等の随時又は定期の確認義務の新設、収支報告書への代表者の確認書の添付等)
●政治資金監査の強化(国会議員関係政治団体の政治資金は原則預貯金の方法で保管すること、登録政治資金監査人による政治資金監査の確認事項の追加等)
●政治資金の透明性向上のためのデジタル化の推進(収支報告書等のオンライン提出の義務化、インターネットでの公表等)
●政治資金パーティーへの対価支払者の氏名等の公開基準を20万円超から5万円超に引下げ
●政治資金パーティーの対価の支払方法を預貯金口座への振込み等に制限
●いわゆる政策活動費の使途の明細の公開の導入
●政党から公職の候補者個人への政治活動(選挙運動を除く。)に関する寄附の禁止
●国会議員関係政治団体から寄附を受けた政治団体の政治資金の透明性の確保のための措置の導入(国会議員関係政治団体以外の政治団体について一定金額以上の寄附を受けたものについて、国会議員関係政治団体の特例規定の適用対象とすること等)
●個人寄附者等の個人情報の保護等(収支報告書に記載された個人寄附者等の住所は、都道府県、郡及び市町村名部分等のみ公表)
【2024年6月26日】
個人情報保護委員会、「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理」を公表
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/3nengotominaoshi/
個人情報保護委員会は、2024年6月26日、個人情報保護法の3年ごと見直しに係る検討の中間整理を公表しました。
本中間整理においては、以下の事項の見直しについて検討する必要があること等が指摘されております。
●要保護性の高い個人情報(生体データ)の取扱い
●「不適正な利用の禁止」(個人情報保護法19条)、「適正な取得」(個人情報保護法20条1項)の規律の明確化
●第三者提供規制の在り方(オプトアウト届出事業者が一定の場合に情報提供先の身元等を確認する義務の新設等)
●こどもの個人情報等に関する規律の在り方
●個人の権利救済手段の在り方(差止請求制度等の新設等)
●課徴金、勧告・命令等の行政上の監視・監督手段の在り方
●刑事罰の在り方
●漏洩等報告(個人情報保護法26条1項)、本人通知の在り方
●本人同意を要しないデータ利活用等の在り方
●民間における自主的な取組の促進
【2024年6月27日】
証券取引等監視委員会、「金融商品取引法における課徴金事例集~不公正取引編~」を公表
https://www.fsa.go.jp/sesc/jirei/torichou/20240627.html
証券取引等監視委員会は、主に、2023年4月から2024年3月までの間に、金融商品取引法違反となる不公正取引に関し、勧告を行った事例を取りまとめ、公表しました。本事例集に記載されている2023年度における課徴金勧告事案の主な特徴は以下のとおりです。
【インサイダー取引】
●上場会社の役員・社員から伝達を受けた者によるインサイダー取引を複数勧告
●上場会社の社員が職務上知得した内部情報を悪用し、借名口座を使用してインサイダー取引を行った事案を複数勧告
●海外に居住する上場会社の中国子会社の役職員が、知人名義の証券口座を使用してインサイダー取引を行った事案を勧告
●公開買付対象者の役員が多数の知人に対して情報伝達・取引推奨に及んだ事案を勧告
●子会社のバスケット条項を適用した事案を勧告
【相場操縦】
●他人名義を含む複数の証券口座を使用し、売り見せ玉と買い見せ玉を交互に繰り返し発注することで株価を人為的に変動させていた事案を勧告
●海外に居住する個人投資家が店頭デリバティブ取引において、見せ玉手法により相場操縦を行った事案を勧告
●違法な安定操作が行われたと認められた事案を勧告
【偽計】
●登録高速取引行為者の電子情報処理組織を用いた高速取引行為による偽計事案を勧告
【2024年6月28日】
金融庁、「マネー・ローンダリング等対策の取組と課題(2024年6月)」を公表
https://www.fsa.go.jp/news/r5/amlcft/20240628/20240628.html
金融庁は、2024年6月28日、「マネー・ローンダリング等対策の取組と課題(2024年6月)」を公表しました。
本レポートは、マネー・ローンダリング・テロ資金供与(以下「マネロン等」といいます。)対策に関し、2023事務年度(2023年7月~2024年6月)における日本の金融機関等を取り巻くリスクの状況や、金融機関等における対応状況、金融庁及び財務局の取組等を紹介しています。マネロン等に関する取組については、以下のものを紹介しています。
●「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画(2024-2026年度)」の策定
●金融庁によるリスクベース・アプローチに基づく検査・モニタリングの実践
●「マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)」の改訂
●各地域における金融機関等の連携強化(業態横断フォーラムの開催)
●金融サービスの不正利用対策に関する注意喚起等の実施
【2024年6月28日】
公取委、「イノベーションと競争政策に関する検討会」最終報告書を公表
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/jun/240628_keitorikikaku.html
公取委は、2024年6月28日、「イノベーションと競争政策に関する検討会」最終報告書を取りまとめました。本検討会は、企業行動がイノベーションに与える影響メカニズム等について、経済学的知見等に基づき理論的・体系的に整理することを目的として、令和5年3月以降開催されているものです。
本最終報告書においては、競争当局が、独占禁止法におけるイノベーションへの影響を評価する際の着眼点等として、以下の点を挙げる等しています。
①研究開発競争に着目した市場画定
製品等が存在しない時点においても、研究開発の目的等に鑑み、将来的に生まれると想定される商品又は役務の市場画定を行い、競争への影響を評価することが適当であること等。
②長期的視点からのイノベーションへの影響評価の着眼点
イノベーションによる長期的な競争促進効果についても適切に評価することが必要であり、短期的な競争制限効果と長期的な競争促進効果が同時に見込まれる場合は両効果を総合的に考慮して独占禁止法上問題となるか否かを判断すべきこと等。
③イノベーションの影響評価における事業者からの適切な情報提供及び立証の在り方
イノベーションを促進する旨の主張をする事業者は、その主張に係る客観的な証拠を積極的に提出することを推奨すること等。
【2024年7月3日】
公正取引委員会事務総長、独占禁止法上の確約手続の運用を強化することを公表
https://www.jftc.go.jp/houdou/teirei/2024/jul_sep/240703.html
2024年7月3日、公正取引委員会事務総長は、定例会見において、以下のとおり、独占禁止法上の確約手続の運用を強化することを公表しました。
●確約手続を適用した事案における確約措置の履行期間は、従前全ての事案について3年間とされていたが、今後は原則として5年間以上とすること
●従前、確約措置については、基本的に当該事業者が自ら履行し、それを当委員会に報告するという形が採られていたが、今後、確約措置全体の履行について、外部専門家による監視を積極的に活用すること
●特に必要があると判断される場合には、公正取引委員会が、罰則付きの調査権限(独占禁止法68条、47条)に基づき、直接の関係者のみならず、取引先事業者や競合他社などに対しても、確約措置の履行状況の確認などを行うこと
【2024年7月10日】
米FTCほか、ダークパターンの使用に関する調査結果を発表
米国連邦取引委員会(Federal Trade Commission)、消費者保護及び執行のための国際ネットワーク(International Consumer Protection and Enforcement Network)、グローバルプライバシー執行ネット
ワーク(Global Privacy Enforcement Network)は、2024年7月10日、ダークパターンの使用に関する調査結果を発表しました。ダークパターンとは、ユーザーを騙したり誤認等させる、ウェブサイトの記載やデザイン等の手法のことを指します。
本調査結果によれば、調査対象とした、世界各国においてサブスクリプションサービスを提供している合計642のウェブサイトとモバイルアプリのうち、76%近くが1つ以上のダークパターンを使用しており、67%近くが複数のダークパターンを使用していたとのことです。また、ダークパターンの内容としてよく見られた手法は、消費者の意思決定に影響を与える可能性のある情報を隠したり開示を遅らせたりする手法(スニーキング)や、重要な情報を不明瞭にしたり、事業者に有利な選択肢をデフォルト設定にしておく手法(インターフェイス干渉)でした。
【2024年7月19日】
総務省、有識者会議による「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会とりまとめ(案)」を公表
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu02_02000416.html
総務省は、2024年7月19日、同省が設置した「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」が作成した「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会とりまとめ(案)」を公表しました。総務省は、2024年8月20日までの間、本とりまとめ(案)について意見を募集しています。
本とりまとめ(案)では、情報伝送プラットフォーム事業者※7等に対し、例えば、以下のような対応を求めるなどしています。
※7 本とりまとめ(案)では、SNS、動画投稿・共有サービス、検索サービス、ブログ・掲示板サービス、ニュースポータルサービス等、インターネット上で第三者が投稿等発信したコンテンツやデジタル広告を不特定の者が閲覧等受信できるように伝送するプラットフォームサービスを情報伝送PFサービスとしており、これを提供する事業者を情報伝送PF事業者と定義しています。
●違法な偽・誤情報に対し、行政機関からの申請を契機とした削除等の対応を迅速化
●悪質な発信者に対する情報の削除やアカウントの停止・削除を確実に実施する方策の具体化
●違法ではないが有害な偽・誤情報への対応として、情報の可視性に直接の影響がないコンテンツモデレーション(収益化停止等)を中心とした対応の具体化
●将来にわたる社会的影響の事前予測と、軽減措置の検討・実施(特に災害時における影響)
●情報流通の健全性への影響の軽減(サービスアーキテクチャや利用規約等の変更による社会的影響の予測・軽減措置の実施等)
●マルチステークホルダーによる連携・協力の枠組みの整備
●広告事前審査の確実な実施と実効性向上のための、審査基準の策定・公表、審査体制の整備・透明化、本人確認の実施等
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