(※画像はイメージです/PIXTA)

本記事は、西村あさひが発行する『N&Aニューズレター(2024/7/31号)』を転載したものです。※本ニューズレターは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法または現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、西村あさひまたは当事務所のクライアントの見解ではありません。

4. 営業秘密持ち出し

(1)営業秘密持ち出し

 

回転寿司店運営会社の役員による営業秘密持ち出し(不正競争防止法違反)が最近大きく報道されました。今後、この種の営業秘密持ち出しの事件は増えていくと思います。

 

会社の役員や幹部レベルであっても手土産感覚で営業秘密を持ち出すこともあり、今の日本では、営業秘密の持ち出しについては罪に当たるという意識が必ずしも高くありません。だから、経営幹部も含めて、改めてそういうのは駄目なんだ、刑事罰に問われるぞ、と研修や教育を十分に行う必要があります。

 

営業秘密の持ち出しは、役職員の退職や転職の際に発生します。どの会社でも励行していると思いますが、退職者から誓約書を取ったり、会社と退職者との間で、持出しを禁止する情報(顧客名簿、社内の開発資料等)と許す情報(個人管理の名刺、手帳・ノート等)とを区分けして両者で確認するといったことが重要です。

 

また、退職者に、誓約書で競業避止義務や同業他社への転職制限をかけることも検討が必要になります。どの程度の範囲や期間で競業避止義務などをかけることができるかは、退職者の地位・職責、退職金等の代償措置の十分さ、期間の限定(3ヶ月か半年か、それ以上か)等を踏まえ、個別に検討する必要があります。

 

テクニカルには、ITシステムやコピー機について、アクセスログのみならず操作ログもとる、USBの接続を制限すること等も予防策として有益です。加えて、退職者から回収した端末などのIT機器についても、必要性やリスクに応じて、中身を検証したり、検証まではしなくても一定期間保管しておくことも考えられます。

 

それと、文書や電子ファイル等に対する営業秘密の表示です。不正競争防止法で営業秘密として保護されるためには、有用性、非公知性、秘密管理性といった要件があり、要は「マル秘」等と表示して役職員がそう認識できるように営業秘密を管理しないといけません。

 

(2)中途採用者に対して(受入れ企業側)

 

転職してきた人が前職の会社から営業秘密を持ち出して、自分の会社で利用した、というケースがあります。そのために、自分の会社も不正競争防止法違反で摘発されたり、前職の会社から、損害賠償を求めて訴えられることになります。

 

だから、中途採用者が他社から営業秘密を自社に持ち込まないようにすることも非常に大事です。具体的な方法としては、日頃の研修(上司同僚が中途採用者に対し、元の勤務先の情報を求めたり、利用したりしない)、中途採用者の入社時の研修、誓約書(転職元の秘密情報を保有していない)等です。

 

そのほか、Gメールの監視も重要です。USBは自社のシステムにつなげないか、ログが残るようにしている会社も少なくありません。そこで、営業秘密を持ち出す場合には、前職の会社のメール・アカウントから、例えば、Gメール・アカウントの方に送り、そのGメール・アカウントから転職先の会社の自分のメールアドレスに送る、という方法が散見されます。だから、転職者について、Gメールで送られてくる情報については特に気をつけてチェックをすることなども重要です。

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