40年間「真面目一筋」だった男の誤算
神奈川県内の食品メーカーに勤める吉崎さん(仮名・64歳)は、新卒入社以来40年以上、脇目も振らずに働き続けてきました。32歳で結婚し、妻は専業主婦に。長女と長男を育て上げ、絵に描いたような「サラリーマン人生」を歩んできたのです。
50代半ばには年収約820万円に達しましたが、吉崎さん自身のお小遣いは月4万円。仕事には自らおにぎりを握り、水筒を持参。趣味といえば近所の散歩と図書館の歴史小説を読むぐらいで、お金のかかる贅沢とは無縁の生活でした。
60歳で再雇用となり、年収が約450万円まで落ち込んでも、「あと少し頑張れば、穏やかな老後が待っている」と自分を奮い立たせてきました。
吉崎さんが描いていたリタイア後の夢は、ささやかなものでした。朝はアラームをかけずに、時間を気にせず起きて、時々は妻と2人で、のんびり温泉旅行や美術館巡りをすることです。
住宅ローンも間もなく完済、子どもたちも独立。65歳で会社を辞めれば、ようやく自由な時間が始まる。そう信じて疑わなかったのですが――。

