退職金を受け取ったタイミングで、住宅ローンの繰り上げ返済を検討する人は少なくありません。繰り上げ返済をすることで毎月の返済負担や利息を減らすことができます。一方で、繰り上げ返済によって手元資金が不足すると、老後の急な支出に対応できなくなる可能性もあります。本記事では、退職金で住宅ローンを完済したものの、築35年の戸建ての維持費に苦しみ、最終的に住み替えを決断した65歳夫婦の事例をもとに、老後の繰り上げ返済で注意すべきポイントを辻本剛士CFPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
老後は安泰だと思ったのに…〈1DKの都営団地〉に住む年金月20万円・60代夫婦。ローン完済の〈4LDKの一軒家〉を売却した「予期せぬ理由」【CFPが解説】
「これでようやく肩の荷が下りる…」退職金で住宅ローンの繰り上げ返済を決意
マサミチさん(仮名・65歳)は印刷会社を勤めあげ、定年を迎えました。現在の資産は、貯蓄約400万円と、退職金として受け取った1,500万円をあわせた約1,900万円です。
住まいは、25年前に築10年だった4LDKの戸建て住宅を35年ローンで購入した持ち家で、妻と二人暮らししています。完済予定は75歳で、住宅ローンはあと10年残っています。
退職金を受け取ったタイミングで頭に浮かんだのが、住宅ローンの繰り上げ返済です。現在の住宅ローン残高は約1,700万円。毎月の返済額は約14万円にもなります。
「65歳を過ぎても、毎月14万円の住宅ローンを払い続けるのは精神的に負担が大きい。借金がなくなれば気持ちも楽になるはずだ」
そう考えたマサミチさんは、妻に住宅ローンの繰り上げ返済を相談しました。
「退職金がほとんどなくなってしまうのは少し不安だけど、このまま利息を払い続けるのももったいないよね」と、妻も悩みながら同意します。
老後の収入は、夫婦合わせて手取りで月20万円ほどの年金を見込んでいました。住宅ローンさえなくなれば、毎月14万円の支出が減るため、家計はほぼ赤字にならずに済む計算です。
「これで毎月の住居費を気にせず生活できる」と確信したマサミチさんは、退職金を活用して住宅ローンの繰り上げ返済を行うことを決意したのでした。