(※写真はイメージです/PIXTA)

複数の相続が発生している「数次相続」という状態をご存知でしょうか? 本稿では、相続の際に知っておくべき「数次相続」について、遺産を分割する方法や登記のやり方等を解説します。

数次相続となる事例を紹介

数次相続とは、法定相続人が相続承認後、相続に関する手続きが終了しないうちに、更にその人が亡くなり、複数の相続が発生してしまう状態を指します。具体的には下図のようなケースが数次相続です。

 

 

 

数次相続がどこまで続くかは法律で特に決まっていません。相続手続きが終了する前に、更に相続人が死亡し、その亡くなった人に相続人が存在する限り、延々と相続が発生してしまいます。

 

ただし、数次相続といっても法定相続人は次の方々に限定され、優先順位があるのも通常の相続と同じです。

 

数次相続と似た相続、代襲相続・再転相続との違いは?

数次相続と似た相続に「代襲相続」「再転相続」があります。それぞれの相続の特徴、数次相続との違いについて解説します。

代襲相続との違い

代襲相続とは本来相続人となるはずの法定相続人が、相続の開始前に死亡、または相続廃除・相続欠格で相続権を失っていた場合、その法定相続人に代わり、その子供が相続人となる制度です。

 

例をあげて説明しましょう。

 

・数次相続:祖父死亡・一次相続発生→法定相続人である父親が相続承認後・遺産分割前に死亡・二次相続発生→父親の法定相続人である子供が相続(父親が既に相続を承認しているため、子供は一次相続の相続放棄ができない)

 

・代襲相続:祖父死亡・相続発生→法定相続人である父親が祖父より前に死亡→法定相続人である子供が父親に代わり相続(祖父→子供に相続され、子供は相続放棄も可能)

 

代襲相続が成立するには数次相続と異なり、被相続人よりも早く法定相続人が亡くなっていなければいけません。また、代襲相続には制限があり、直系尊属の場合は被相続人からみて孫(代襲相続人)、孫が既に死亡していた場合はひ孫(再代襲相続人)までが代襲相続の範囲となります。

 

被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となる場合、その兄弟姉妹が既に死亡していた場合、その子供(甥姪)までが代襲相続の範囲です。

再転相続との違い

再転相続とは、一次相続の法定相続人が相続を承認するか放棄するかを判断しないまま、熟慮期間中に死亡、一次相続・二次相続が同時期に発生したケースを指します。

 

数次相続とかなり似ていますが次の点に違いもあります。例をあげて説明しましょう。

 

・数次相続:祖父死亡・一次相続発生→法定相続人である父親が相続承認後・遺産分割前に死亡・二次相続発生→父親の法定相続人である子供が相続(父親が既に相続を承認しているため、子供は一次相続の相続放棄ができない)

 

・再転相続:祖父死亡・一次相続発生→法定相続人である父親が相続を承認するか放棄するか決めないまま死亡・二次相続発生→父親の法定相続人である子供が再転相続(一次相続・二次相続の両方の相続人ともなれる。ただし一次相続を相続承認し、二次相続は相続放棄するという選択ができない)

 

なお、再転相続の場合もどこまで続くかは法律で特に決まっていません。

次ページ数次相続が生じた場合の遺産分割はどのように行う?

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