毎週末に来ていた孫が、突然来なくなった
雅子さん(仮名・73歳)は、夫を亡くしてから戸建てで一人暮らしをしています。年金は月22万円ほど。住宅ローンはなく、貯蓄も約1,700万円あるため、日々の生活に大きな不安はありませんでした。
雅子さんの一番の楽しみは、車で30分ほどの場所に住む長女・奈緒さん(仮名・45歳)と、小学生の孫に会うことでした。
夫が亡くなった直後、落ち込む雅子さんを心配し、奈緒さんは毎週末のように実家を訪れていました。
「おばあちゃんのカレーが食べたい」
孫にそう言われると、雅子さんは前日から買い物へ行き、好物を用意しました。食事代や外出費はほとんど雅子さんが負担し、誕生日や進級のたびに祝い金も渡していました。
「お金を使う相手がいるのは、幸せなことだと思っていたんです」
ところが孫が中学生になると、部活動や友人との予定が増えました。奈緒さんも管理職になり、休日に仕事が入ることが多くなります。
訪問は毎週から月に一度となり、やがて奈緒さんから「しばらく週末は行けそうにない」と連絡がありました。
雅子さんは明るく答えました。
「忙しいなら仕方ないわ。落ち着いたらまた来てね」
しかしそれから半年間、孫が実家を訪れることはありませんでした。
冷蔵庫には、孫が好きだったジュースやアイスを買い置きしたままです。休日になると、車が止まる音がするたびに窓の外を確認するようになりました。
電話をすれば孫は話してくれます。ただ、以前のように長く会話は続きません。
「今、友達とゲームしているから。またね」
電話が切れると、静かな家に時計の音だけが残りました。
雅子さんは、娘を責めるつもりはありませんでした。それでも、近所の公園で祖父母と歩く子どもを見ると、胸が沈んだといいます。
「孫が来なくなって半年たって、私にはほかに楽しみが何もなかったと気づきました」
内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、直近1年間に何らかの社会活動へ参加した65歳以上の人のうち、生きがいを「十分感じている」または「多少感じている」と答えた割合は84.6%でした。何の活動にも参加しなかった人より23.0ポイント高く、人との交流や活動の機会が高齢期の充実に関わることがうかがえます。
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