(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症で脳萎縮がかなり進んでいるのに、理路整然と話し、認知症の症状がほとんど見られない人がいます。反対に、脳萎縮は目立たないのに一日じゅうボーッと一点を見つめている方もいます。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『70歳からの老けない生き方』(リベラル社)で解説します。

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一病息災くらいがちょうどいい

■年をとればみんな「ウィズ・がん」「ウィズ・アルツハイマー」

 

私は浴風会病院という老人ホームに付設されている高齢者専門の総合病院に勤務していたのですが、そこでは病死した患者さんの解剖結果を報告する「剖検検討会」を定期的に行っています。

 

あるとき耳にした病理の医者の言葉がいまでも忘れられません。

 

「85歳を過ぎて、体のどこにもがんのない人はいません。脳にアルツハイマーの変化のない人もお目にかかったことがないです」

 

80代以上にかぎれば、動脈硬化の所見のない人もいなかったといいます。

 

無病息災という言葉があります。これは神社などで祈願する言葉であって、残念ながら現実には長い人生において無病など、ごくわずかな例外を除いてあり得ないことです。

 

「一病息災くらいがちょうどいい。一つくらい病気を持っているほうが体調に留意するから、結果的にはそのほうが健康で長生きする」

 

と、ある医師がそういっていましたが、健康の真理をついているのかもしれません。

 

ご遺体の解剖結果を数多く見てきた経験から、年をとれば誰もが病気と関わらざるを得ない、という当たり前の現実をしばしば目の当たりにしてきました。最近では、コロナ禍で「ウィズ・コロナ」という言葉をよく見聞きしますが、その例にならえば、超長寿時代の現代においては「ウィズ・がん」「ウィズ・心筋梗塞」「ウィズ・アルツハイマー」は、高齢者であれば誰にでも想定しておかなければならないことなのです。

 

がんが体内にあっても、かなり高齢の場合は症状が出ない方もいます。肺炎など別の原因で亡くなられて解剖してみたらがんがあったという方がほとんどだったのです。そう考えると、ご高齢で辛いがん治療を受けるより違う選択肢もあるのではないかと思います。自分が病気になった時の治療法の希望を、健康なうちに決めて、もし入院するならこの病院、というところまで決めておくことをお勧めします。

 

脳に関しても、頭部CTを見るだけでかなりはっきりした状態が把握できます。アルツハイマーでは脳が萎縮し、脳のシワとシワの間が広がってきます。ただし、脳萎縮がかなり進んでいるのに、理路整然と話し、認知症の症状がほとんど見られない方がいます。反対に、脳萎縮は目立たないのに一日じゅうボーッと一点を見つめている方もいます。

 

その違いはどこからくるのでしょうか。

 

まずいえることは、萎縮していても機能があまり衰えていない方は、やはり頭をよく使っている。頻繁に「頭を悩ませている」といってもいいでしょう。

 

加齢によって脳の神経細胞の数はかなり減少してきます。脳全体も萎縮してきます。それは自然の摂理であって防ぎようはありません。パソコンにたとえれば神経細胞というハードの年式が古くなるのはやむを得ないのです。ところが、アプリケーションなどのソフトが古くなければ、パソコンとしての機能はさほど衰えません。加齢とともに縮んでくる脳であっても使い方次第では現役を続けられるのです。

 

これは脳にかぎったことではありません。体に変化が起きたとき、それをすぐに無理やり取り去ろうとか消してしまおうと考えるのはおすすめできません。体に問題があることを前提に、どう不具合と付き合っていくかをまず検討すべきです。

 

しかし多くの場合、現実は不具合が起きればすぐ病院、そして薬が当たり前になっています。それで問題は解決するかといえば、必ずしもそうとばかりはいえません。

 

和田 秀樹
ルネクリニック東京院 院長

 

 

※本連載は和田秀樹氏の著書『「65歳の壁」を乗り越える最高の時間の使い方』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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