(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナによる自粛生活の長期化が高齢者の心身への影響が懸念されています。75歳以上の「フレイル健診」で全国約350万人が要介護状態の入り口に立っています。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『70歳からの老けない生き方』(リベラル社)で解説します。

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一般的に認知症は症状がゆっくり進む

■コロナ自粛中でもフレイル予防はできる

 

一般的に認知症は症状がゆっくり進む傾向があります。じわじわとぼけたような状態が続き、それが進んでいきます。

 

一方、老人性うつ病は記憶障害や着がえをしなくなるなどが同時に、急に発症することが多くなります。さらに「眠れなくなる」「夜中に何度も目を覚ます」「急な食欲の低下(逆に過食)」などが起きたらうつ病を疑うべきです。

 

フレイルはまさにこの老人性うつ病の「とば口」に立たされているのですから、適切な対処が必要になってきます。自分にとってフレイルを起こしやすい危険因子を調べ、予防法を実践することが大切です。

 

もちろん、特効薬的な対処法があるわけではなく、対策の柱としては運動、食事、睡眠となります。年齢を重ねれば自分の体に合った運動法や睡眠法を実践しているはずです。それを意識して、実践することが大事です。

 

コロナ自粛中でも、室内で軽い運動をする、人の少ない朝の時間帯などにでも外に出て、短時間でも太陽の光を浴びるということはできるでしょう。運動をすればお腹も空きますので食事で栄養を摂ることも心がけたいものです。

 

電話でもよいので、人と話すこともフレイル予防の一つです。

 

■肉を食べると元気が出るのは本当

 

誤解を恐れずにいえば、昭和30年代くらいの日本の食卓はあきらかに栄養不足でした。特に肉の量は少なく、タンパク質の摂取は魚介類と豆腐、納豆などの植物性タンパク質が中心でした。それが、高度成長期以降、肉の摂取量が増え、健康な体が作れたのです。

 

ただし、現状では肉の摂取量は十分ではありません。免疫機能を高めるためには動物性タンパク質は必須であり、脂肪は免疫細胞のリンパ球を形成する重要な役割を担っています。人には肉食動物の一面があり、肉を食べることは自然に沿ったことなのです。

 

「年をとったら肉は控えて消化の良いものを」と言う人がいますが、私は日本人の肉食の少なさが心身の不調を起こしていると考えています。

 

日本人の多くは年をとると魚や野菜が食事の中心になり、肉食が減少する傾向にあります。日本人の肉の摂取量は1960年代で1日に20グラム以下。1970年代に日本マクドナルドを創業した藤田田氏は「日本人にもっと肉を食べさせたかった」と語っていましたから、70年代でもわずかな量だったはずです。

 

その後、バブル期などを経て少しずつ量は増えてきましたが、現在でも80グラム程度に過ぎません。80年代に、おかしな健康ブームから肉は食べないほうがいいという風潮が強まり、2017年には70年代のレベルにまで低下しています。

 

一方、アメリカは心臓疾患の増加から肉食を減らす運動が行われてきましたが、それでも現在は約300グラム程度は食べているといわれています。

 

フレイル予防はもちろんのこと、健康全般を考えても日本人はもっと肉を食べるべきです。欧米では心筋梗塞で亡くなる方が多いので、コレステロール値を下げるために肉食を控えるのは納得いきますが、現在の日本での死因の上位はがんです。がんと闘う免疫細胞をつくる栄養としてコレステロールは欠かせません。

 

がんはコレステロールが高いほうがなりにくいという調査データもあるのです。

 

「落ち込んでいたら焼肉を食べる」

 

そんな人が多いようですが、これも正論です。

 

すでに意欲の低下と脳内神経伝達物質のセロトニンとの関係を述べましたが、幸福をより感じやすくなるセロトニンは肉を食べることによって増加することがわかっています。肉に含まれるアミノ酸などがセロトニンを生成する材料になっているからです。

 

和田 秀樹
ルネクリニック東京院 院長

 

 

※本連載は和田秀樹氏の著書『「65歳の壁」を乗り越える最高の時間の使い方』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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