年金受給のタイミングを5年繰り下げたAさんだったが…
かつて上場企業で勤めていたAさん(72歳・男性)。息子たちは独立し、2歳年上の妻・Bさんと暮らしています。60歳で定年後、65歳まで再雇用されていました。
再雇用終了後、70歳まではわずかなアルバイト収入のほか、企業年金や貯蓄を使って生活できていたことから、公的年金は70歳になった時に繰下げ受給しました。
健康面では特に不安もなく、足腰も丈夫だったため、「繰下げで増えた年金があるし、趣味のゴルフも楽しんで暮らそう」と思っていました。しかし、Aさんはやがて繰下げをしたことが本当に正しかったのか疑問に思うようになったそうです。いったいなにが起こったのでしょうか。
老齢年金は「繰下げ受給」により受給額を増やせる
繰下げ受給は、本来65歳から受給できる老齢基礎年金・老齢厚生年金について、受給開始時期を遅らせる代わりに、年金の受給額を増額できる制度です。1ヵ月繰下げをするごとに0.7%増額します。
現在は75歳まで繰下げをすることができますが、Aさんは法改正前(70歳までが上限)だったため、70歳で繰下げ受給を開始しています。65歳から5年待って70歳で繰下げ受給を開始したことで、65歳時点で計算された年金額に42%(0.7%×60ヵ月)も増額させることができました。
Aさんの65歳時点での年金額は、年間240万円程度。月額では約20万円でした。
Aさんは無事に健康な状態で70歳を迎え、年金事務所へ手続きに向かいました。そこで職員から、70歳で繰下げをした場合のAさんの年金は、年間約340万円(月額28万円)になると教えてもらいました。
「月28万円以上が生涯続くのか。これなら少しは余裕のある生活ができそうだな……趣味のゴルフも楽しめそうだ」と、今後の生活への期待を膨らませていました。
また、年金事務所から渡された見込額の試算表によると、65歳から受給を開始した場合と70歳で繰下げをした場合とで、生涯の受給累計額で逆転するのが81歳11ヵ月とのこと。Aさんは長生きするつもりで年金の受給を開始しました。