(※写真はイメージです/PIXTA)

自社に合ったデジタルツール選定は社内のDXに必要不可欠なプロセスです。さまざまあるツールのなかから、自社が求める要件に合うツールを選ぶにはどのような視点が必要なのでしょうか。不動産販売事業を経営する筆者・中西聖氏が、自社で進めたDXプロジェクトの経験をもとに解説します。

新ツールを導入…現場の反応は上々

A社のツールにリプレイスすると決めて、DXチームには各部門をつなぐアーキテクチャを考えてもらうよう指示した。

 

重要なのは導入ではなく運用であると分かっているため、まずは既存のCRMツールの利用率が低い中古物件の販売部門に向けて、彼らが使いやすいと感じ、使いたいと思う環境を試験的につくってもらう。A社の営業やエンジニアとの打ち合わせと折衝役はサイトウに任せ、現場のヒアリングはDXチームの新メンバーであるヤマシロを責任者とし、現場の業務フローを踏まえながら必要な機能を構成していくアジャイル的な開発で進めてもらうことにした。

 

CRMツールは決まった。DXチームも要件定義に動き出している。ただ、CRMツールのリプレイスは時間が掛かる。RPAなど小さめのアプリケーションと違い、CRMツールは要件を洗い出し、スケジュールを立て、既存のCRMツールからの移行計画をつくる必要があるからだ。どれくらい掛かるだろうか。1カ月か、あるいはそれ以上か。僕は一日も早くこの案件を完遂したいという思いを抱えながら、テスト環境が出来上がるのを待つことにした。

 

テスト環境は、それから2週間もしないうちに出来上がった。その速さに驚くとともに、これが専任のチームで取り掛かる効果なのだとあらためて実感した。

 

現場の反応も上々だった。既存のCRMツールの印象が良くなかったこともあり、当初はツールの入れ替えに懐疑的な人も多く、会社判断でツールの利用を促進する取り組みを強制的と感じる社員もいた。

 

しかし、新しいCRMツールがシンプルな作りだったこともあってか、どうやら受け入れてくれたようだった。 部門内での理解と浸透は、DXチームのヤマシロと部門のリーダーであるイトダの連携プレーによるところが大きい。ヤマシロが現場のヒアリングとコミュニケーションに尽力し、イトダは根気強くDXの重要性や必要性を部門内で説いた。

 

CRMツールの入れ替えのように業務のやり方そのものが変わる大きな変更は、会社が号令を掛けるだけのトップダウンではなかなか進まない。イワサキが言っていたように、重要なのは部門の責任者であるイトダにとって有益であること、かつ現場の社員が効果的に使えると思えることだ。

 

DXチームには現場と密なコミュニケーションを取ってもらい、彼らの課題や使用感を把握してもらう。加えて、現場のリーダー職にも中間管理職の立場として、一緒にDXを推進し、全員で変革を起こしていく意識を醸成してもらう。会社、DXチーム、部門のリーダー、現場が一体となり、ようやくDXは形になる。テスト環境の構築は、そのことを学ぶ貴重な機会になった。

 

テスト環境ができてからのDXチームの活躍は目覚ましいものがあった。中古物件の販売部門はほかの部門より新しくできた部門であったため業務フローが固まりきっていないところがある。

 

それでもDXチームは食らいつき、営業プロセスなどが急に変更になった場合にも臨機応変に対応しながら、業務の効率化や働き方の変革に結びつく機能などを厳選し、CRMツールのプラットフォーム化を着々と進めていった。

 

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※本連載は、中西聖氏の書籍『DX戦記 ゼロから挑んだ デジタル経営改革ストーリー』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

中西 聖

幻冬舎メディアコンサルティング

紙ありき、無駄な残業、膨れ上がる営業コスト…… 非効率極まりないアナログだらけの日常から脱却せよ! 課題山積の不動産会社はいかにして 「不動産×IT」のハイブリッド企業に進化したのか? 「失敗することでしか前…

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