(※写真はイメージです/PIXTA)

社内のDX推進で特に重要になるのは、社内全体をつなぐシステムツールです。しかし、折角便利なツールを導入しても、現場ではなかなか使われず無用の長物となるケースは少なくありません。なぜなのでしょうか。不動産販売事業を経営する筆者・中西聖氏が自社で進めたDXプロジェクトの経験をもとに解説します。

全社共通のプラットフォームを選ぶ基準

社内DXの方向性として、僕たちはまず7つある部門をつなぐシステムを構築し、部分最適となっているIT環境(個人最適といってもいいかもしれない)を全体最適へと進化させていくロードマップを描いていた。

 

全体最適を目指すためには全社で共通して使う機能を搭載した全社共通のプラットフォームを決める必要がある。会社のメインインフラといえるプラットフォームツールはすでにあったが、もう一つのサブインフラ的なプラットフォームとしてCRMツールの検討も行った。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

既存か、新規か…コスト面を考慮し検討

ここで僕たちは選択を迫られた。選択肢は2つあり、1つは、すでに導入済みのCRMツールを使う方法。もう1つは、新しいツールに入れ替える方法だ。

 

今使っているCRMツールは、新築物件の販売部門と中古物件を売買する部門それぞれで主に営業担当者が使っている。全社共通のプラットフォームにするなら共通プラットフォームとして適した機能を増やす必要があり、そこで追加のコストが発生する。

 

一方の新しいツールにはいくつか候補があり、いずれも現行のCRMツールとの比較ではコストメリットがある。ただ、初めて導入するツールとなるため、導入のための要件定義から始めなければならず、システムのリリースまで手間と時間が掛かる。

 

全部門共通のツール導入は基幹システムの構築ほどではないにしても、アプリケーションの実装とは桁違いの大きな投資になる。導入に掛かるイニシャルコストも高く、長く使うものであるためランニングコストも掛かる。一度入れたら簡単にはリプレイスできない。ここで間違うと大きな損失になるだろう。

 

僕はまず既存のCRMツールについて現場の利用状況を確認してほしいとDXチームに指示した。既存のCRMツールは2016年に導入した。導入されている部署の社員は、基本的な使い方は理解しているはずだ。日常業務で使わなければならない場面もある。

 

導入から少し経った頃だったか、CRMツールに顧客情報を入力しないと契約書が発行できないようなつくりにした。業務フローの流れにおいて、下流部分である契約書発行をCRMツールで縛ることで、部門内でのCRMツール浸透を図ろうとしたのだった。

 

ただ、その効果は限定的だった。むしろ逆効果といっても良いかもしれない。現場には顧客情報などをエクセルで管理したほうがラクだと考える社員が多く、顧客のアポイントが取れた、1回目の商談が終わった、といった顧客管理の状況はエクセル、契約書の発行段階でCRMツールに入力している人がいる。そこで二重入力が発生する。

 

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※本連載は、中西聖氏の書籍『DX戦記 ゼロから挑んだ デジタル経営改革ストーリー』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

中西 聖

幻冬舎メディアコンサルティング

紙ありき、無駄な残業、膨れ上がる営業コスト…… 非効率極まりないアナログだらけの日常から脱却せよ! 課題山積の不動産会社はいかにして 「不動産×IT」のハイブリッド企業に進化したのか? 「失敗することでしか前…

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