(※写真はイメージです/PIXTA)

社内DX推進において、自社に合ったシステムツール選びは自社の成長に関わる重要なプロセスです。不動産販売事業を経営する筆者・中西聖氏は、DXのためにシステム投資をしましたが、途中で断念すること。これにより2,000万円のコストが無駄になってしまいましたが、結果的には正解だったといいます。本記事では、筆者が自社で進めたDXプロジェクトの経験をもとに、DXのための設備投資について解説します。

目先のコストより大事なもの

~前回までのあらすじ~

筆者・中西聖氏は、自社のDXを進めるにあたり、社内のメインインフラといえるプラットフォームを既存ツールから新規ツールへと移行した。しかし、実際に新規ツールを導入してみると、これまでの既存ツールのほうが自社にとってはメリットが大きいことがわかり、結局既存ツールに戻すことに……。

 

翌日は定例のDX会議だった。僕はその場にサイトウ※1を呼び、方針転換を伝えることにした。「大変申し訳ないのですが」と前置きして、僕はサイトウにA社のシステムの開発を中止することを伝えた。また、既存のCRMツールを社内共通のプラットフォームとする方針を伝えて、開発を指示した。

 

※1 サイトウ:DXプロジェクトの専任リーダーとして筆者の会社に新しく採用された人物

 

当然、サイトウは理由を聞いた。着々と進めてきたCRMツールの導入が僕の一存で白紙になったことに戸惑いも感じている様子だった。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

僕は、会社の今後の成長を支えられるシステムが必要であること、そのためにCRMツールの拡張性を重視したいことなどを伝えた。サイトウもその方針を理解したようだったが、既存のCRMツールをプラットフォームにすることへの不安もあった。

 

「既存のCRMツールは現場でのアップデートが難しく、そのせいで普及しませんでした。その問題はどう解決するのですか?」

 

サイトウの問いに対して、僕は現場ヒアリングによってUIとUXを高め、使ってもらえるようにするしかないと答えた。そう聞いて、サイトウは力なく頷いた。おそらくA社のシステム開発を中止する判断が覆らないと悟ったのだろう。理解はしたが納得はしていない。そんな感じの表情だった。

 

かなりの労力を費やしたサイトウとDXチームのメンバーにとって酷な判断であることは分かっている。しかし、ここは正念場だ。

 

A社のCRMツールを試験的に作ったことで、CRMツールが会社の成長のために非常に重要なツールであることが分かった。拡張性のあるCRMツールでなければ会社を成長させることが難しいことも学んだ。変革をもたらすシステムのあり方について、以前はモヤモヤと霧がかった状態だったが今は解像度が上がっている。

 

変革の可能性と、売上のアップサイドを狙えるチャンスが見えているなら、感情的には苦しかったが、論理的、合理的に考えて既存のCRMツールしかない。それが分かっているからこそ、僕は引くわけにいかず、サイトウには納得してもらうしかなかった。

 

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※本連載は、中西聖氏の書籍『DX戦記 ゼロから挑んだ デジタル経営改革ストーリー』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

中西 聖

幻冬舎メディアコンサルティング

紙ありき、無駄な残業、膨れ上がる営業コスト…… 非効率極まりないアナログだらけの日常から脱却せよ! 課題山積の不動産会社はいかにして 「不動産×IT」のハイブリッド企業に進化したのか? 「失敗することでしか前…

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