顧客情報のデータ化で一元管理が可能になるも…まさかの「業務量倍増」に陥った残念なワケ【DX失敗事例】

顧客情報のデータ化で一元管理が可能になるも…まさかの「業務量倍増」に陥った残念なワケ【DX失敗事例】
(※写真はイメージです/PIXTA)

業務のデジタル化によってコスト削減や人的負担の軽減を図るDX。不動産販売事業を経営する中西聖氏も、自社のDXを推進していました。本記事では、中西氏が自社のDXの一環として行った顧客情報のデータ化の失敗体験から、DXによりむしろ業務負担が増えてしまう理由を解説します。

顧客情報書類のデータ化を優先することにしたが…

~前回までのあらすじ~

筆者・中西聖氏は、自社のDX推進のためにDXプロジェクト遂行チームを発足した。DXチームから提案されるさまざまな案に対し、社長としてのこれまでの方針では「まずやってみる」「失敗も学習のひとつ」というスタンスのもと、積極的にツールの開発や導入を進めてきた。しかし、その方針を変更し、できる限りの無駄を省くため、提案された案の数字は鵜呑みにせず、細かく検証して厳しく判断することにした。急な方針変更にチームのメンバーは戸惑ってしまい……。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

どうにかしてこの状況を抜け出さないといけない。そう考えて、僕は即効性がある取り組みとして、ある仕事の優先度を上げてDXチームに頼むことにした。

 

それは、賃貸管理部門のキャビネットに詰め込まれている顧客情報や契約書などの書類をデータ化する仕事だった。全社共通のプラットフォームができている今、部門間でデータなどの情報を連携できるようにすればDX効果にレバレッジを掛けることができる。

 

完全自動化を目指したRPA導入はデータが整っていないためうまくいかなかったが、共有、共通のデータがあればより高度なDXも可能になると考えたのだ。

 

書類が増え続けていることで高さ2メートル以上あるキャビネットはすでに100基を超えている。これは16年にわたって紙ベースの仕事を続けてきたレガシーコストだ。放っておけばキャビネットはさらに増える。キャビネットに掛かる賃料も積み上がる。

 

どうしても紙で保存しなければならない書類もあるが、それ以外は部門間のデータ連携によって生産性にレバレッジを掛けたい。そこを目的として、すべてデータ化してほしいとDXチームに依頼した。

 

DXチームの概算によれば、データ化によってキャビネット数は10分の1以下に減らせるという。これは大きい。社員が顧客情報を参照するたびにいちいち書類を漁りに行く必要がなくなるし、全社最適のデータ連携を進めることで、情報の抜けがあったり、字が汚くて読めないといったこともなくなる。DXプロジェクト遂行前の2018年に目にした「22時の残業の光景」もようやく解消できる。

 

DXチームの仕事は速かった。DXチームの概算どおり、100基あったキャビネットは7基にまで減らすことができた。現場へのヒアリングやツール導入のための資料作りばかりだったなかで、目に見える形になる書類のデータ化は気分的に取り掛かりやすかったのかもしれない。

 

これは僕が狙ったことでもあった。新たなツール導入の効果は見通しづらく、うまくいかないリスクがある。

 

しかし、書類のデータ化は確実だ。書類が減ったという目に見える効果が生まれ、情報を取り込んでデータ化するシンプルなタスクだから失敗リスクも小さい。DXの効果を実感し、達成感によって気分を一新し、難航しつつあるDXプロジェクト全体の雰囲気と空気感を変えたいと思っていた。

 

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※本連載は、中西聖氏の書籍『DX戦記 ゼロから挑んだ デジタル経営改革ストーリー』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

中西 聖

幻冬舎メディアコンサルティング

紙ありき、無駄な残業、膨れ上がる営業コスト…… 非効率極まりないアナログだらけの日常から脱却せよ! 課題山積の不動産会社はいかにして 「不動産×IT」のハイブリッド企業に進化したのか? 「失敗することでしか前…

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