(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症の進行を食い止めるために何より効果的なのは、人と会って話すことです。人と会うことは、前頭葉を刺激するもっとも簡単で効果的な行動です。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『「65歳の壁」を乗り越える最高の時間の使い方』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

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うつ病を引き起こすセロトニン不足

■心の病を引き起こす心因と身体因

 

なぜ、うつ病になってしまうのでしょうか。

 

原因は大きく分けて2つあります。「心因」と「身体因」です。

 

「心因」とは、妻や夫に先立たれてしまったり、ペットが死んでしまうなどによって、心のよりどころをなくしたような場合です。

 

「身体因」とは、外出をしなくなったり、食事が偏って栄養素が不足してしまうなどのために、セロトニンが不足するという身体に由来する場合です。

 

セロトニンはうつ病の発症に大きく関わってくる神経伝達物質です。年をとるにしたがってセロトニンは分泌されにくくなります。一般的には40代頃から、セロトニンの分泌は減ってきます。

 

セロトニンの分泌のためにポイントについて、次項で紹介していきましょう。

 

【画像】「老人性うつ病」と「認知症」の見分け方>>>

 

■セロトニンの分泌を活性化させる3つのポイント

 

①タンパク質をとる

 

セロトニンの原料は、タンパク質を構成するアミノ酸のひとつ、トリプトファンです。トリプトファンは体内で必要量を合成することができません。そのため、食物からの摂取が必要ですし、日々の食事でタンパク質を摂取できていないとトリプトファン不足となり、セロトニンが作れません。

 

タンパク質をとるための食材として、何と言っても私がおすすめしたいのは肉です。肉を食べることは、セロトニンと同じく、特に男性は年をとるごとに減っていく男性ホルモンを補うことにも役立ちます。「年をとるほど肉を食べたほうが良い」というのが私の持論です。高齢者を診療していても、肉類を食べている方は肌ツヤもいいですし、筋肉にもハリがあります。

 

ただし肉だけを必要以上に食べるというのは、よくありません。どんなに効果のある食材でも過剰摂取はやはり体にマイナスです。

 

②太陽の光を浴びる

 

太陽などからの光刺激は、セロトニンの分泌を活性化させます。

 

雨や曇り空では、なんとなく気持ちがふさいでしまいます。その一方で青空が広がっているとそれだけで気持ちが明るくなるものです。

 

これは太陽光を浴びることによりセロトニンの分泌量が増えることも大きいと言えます。

 

おすすめは朝の太陽光を浴びること。これによりスムーズな入眠にもつながってくるからです。睡眠中は、男性ホルモンや成長ホルモンといった老化防止に欠かせないホルモンも活発に分泌されます。

 

窓から差し込んでくる朝の太陽光でも効果があるといわれていますが、外に出て浴びたほうが効果は高いでしょう。時間は15〜30分で十分。実はセロトニンは、長く太陽光を浴びすぎると分泌量が減るという性質もあります。

 

これもやはり、やりすぎると逆効果になっていまいます。

 

③適度な運動を心がける

 

ウォーキングやサイクリング、水泳、ダンスなどの有酸素運動も大事です。

 

激しすぎる運動はセロトニンの分泌を活性化させず、むしろ老化を進める原因にもなりますから、へとへとになるまで泳いだりするようなことはおすすめしません。

 

適度な運動として特に良いと私が考えるのは、ウォーキングです。

 

ウォーキングは、セロトニンの分泌を活性化させると同時に、足腰を丈夫にして、心肺機能を高める効果も期待できます。さらに歩くことで骨の老化スピードも抑えられます。

 

セロトニンの分泌を意識するのであれば、普段よりやや速足を意識しながら、リズミカルに歩きましょう。時間は5〜30分。足腰をきたえたい場合には、それ以上の時間でも良いでしょう。

 

次ページ「数独」は認知症の改善に効果がない?

※本連載は和田秀樹氏の著書『「65歳の壁」を乗り越える最高の時間の使い方』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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