(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症の進行を食い止めるために何より効果的なのは、人と会って話すことです。人と会うことは、前頭葉を刺激するもっとも簡単で効果的な行動です。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『「65歳の壁」を乗り越える最高の時間の使い方』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

「数独」は認知症の改善に効果がない?

■人と会うことは認知症を食い止めるための最善の方法

 

このコロナ禍によって「コロナうつ」という言葉も聞かれました。これは専門用語ではありませんが、コロナ禍により趣味が途切れてしまうことや、外出を控えるようになるなどの結果により引き起こされた、うつ病のことです。

 

コロナ禍の行動制限によって、家にいることが多くなったために、太陽光を浴びなくなったり、歩くことが少なくなった方は少なくはありません。そうなると先述のように、セロトニンの分泌は促されませんし、うつ病にもつながってしまいます。

 

また私は、コロナ禍により認知機能がかなり落ちた高齢者を何人も知っています。

 

人とコミュニケーションをとらなくなって、頭を使うことが減ってしまったということがその原因です。

 

認知症は脳の老化によって起こります。

 

脳の中で、最初に感情や行動の司令塔である前頭葉が萎縮します。すると、意欲がなくなり、だんだんと何もしなくなっていきます。何もしないと余計に進行するという悪循環も生まれます。

 

認知症の進行を遅らせるには、頭と体を動かすことが効果的です。

 

頭を動かすという目的から「『数独』や『100マス計算』などの脳トレをやったほうがいいのでしょうか?」と聞かれることがあります。これについて、私は脳トレは認知症の改善にあまりつながらないと考えています。確かに、やり続けていれば点数が上がっていくでしょう。それを見ればご自身もご家族も「きっと脳トレの効果で、脳が活性化されたはずだ」と思うかもしれません。

 

しかし、その種目の点数は上がっても、ほかのテストの点数は上がらず、その効果が限定的であることが近年わかってきました。

 

要するに、慣れただけ。頭が良くなったというわけではありません。

 

私の臨床経験から言えば、認知症の進行を食い止めるために何より効果的なのは、人と会って話すことです。人と会うことは、前頭葉を刺激するもっとも簡単で効果的な行動です。

 

親しい人や好きな人、共通する趣味を持つ人と会う時間は、とても楽しいものです。

 

高揚感も湧きますし、好奇心も満たされ、さまざまな感情をもたらしてくれます。

 

人と話すとなると、何をどのように言葉にするのかを考えて相手へ伝えます。そして相手からの反応や返ってくる話を理解して、それにまた応じていくというように、頭をフル回転させることになります。これこそ、強力な脳トレーニングと言えるでしょう。

 

ですから、人と会うことが認知症を食い止めるための最善の方法なのです。

 

外出を自粛せざるを得ない場合でも、何もかも一斉に辞めてしまうのではなく、家の中での運動や、インターネットを介してパソコンやスマートフォン・アプリなどからリモートで人と会ったりするなど、自分を衰えさせない対策をとってみてください。

 

和田 秀樹
ルネクリニック東京院 院長

 

 

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※本連載は和田秀樹氏の著書『「65歳の壁」を乗り越える最高の時間の使い方』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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