「贅沢はしていないし普通に暮らしているのに、どんどんお金がなくなるんです……」年金暮らしに突入してしばらくすると、そんな風に悩む人がいます。その場合、「普通の暮らし」の考え自体がズレていることも少なくありません。

3,200万円あった貯金が7年で1,500万円まで激減

金子和彦さん(仮名・72歳)は7年前に仕事を退社。それからは妻と2人、年金と貯金で生活をしています。年金は夫婦合わせて月24万円ほど、貯金は退職金の残りも含めて1,500万円あります。

 

しかし、実は金子さんの貯金、65歳の時には3,200万円あったのだそう。7年間で1,700万円を使ったことになります。

 

「私としては、普通に生活してたんですけどね。大きかったのは車の買い替えぐらいで……」

 

しかしよく聞くと、金子さんのいう普通は、「老後の普通」ではなかったのです。

 

金子さんは、地方都市の中小企業の元サラリーマン。会社では部長まで昇りつめ、部下も数人抱えていました。体育会系で面倒見のいい金子さんは、よく部下を連れてお昼に行ったり飲みに行ったりして、そのお金を払っていたそうです。

 

「それ普通じゃないですか? だって若い奴らは給料も安いんだから出してあげなきゃ」

 

営業マンで外回りが多く、昼は外食。趣味はゴルフで、仕事の付き合いで休日に行くことも多かったとか。本人曰く、「絵にかいたような昭和スタイルの会社員だった」といいます。

 

「うちは娘1人が国立大に行ってくれて思ったよりお金がかからなかったし、現役時代は最高で年収850万円ぐらいあったから、そんな生活でも問題なくやってこれた。妻もちょっとパートしてましたしね」

 

そんな性格の金子さんは人望が厚く、定年後も友人や元同僚、部下からの誘いが途切れないのだといいます。しかし……。

 

毎月12万円の赤字+αで、このままいけば老後破産も

金子さんは、食事や飲み会の場では現役時代と同じ調子で周囲に奢ってしまったり、そうでなくても少し多めに払ったり。時間があるからと誘いもほとんど断ることなく、ゴルフにもしょちゅう行っていました。

 

そんな生活だったので、使うお金は現役時代と比べて減らないどころか、多い月もあるほど。金子さんにとっては現役時代の延長だったので、当たり前だと思っていたのですが。

 

実際には年金月24万円に対して、支出はざっくり月36万円。毎月12万円の赤字ですから、その分を貯金から切り崩していたことになります。7年間で1,000万円ほどのマイナスですが、それに加えて車や家電などの買い替え、夫婦の旅行など、ピンポイントの支出も当然発生していました。

 

そういった積み重ねによって、3,200万円が1,500万円になることは何も不思議ではありません。

 

「妻は私を立ててくれるタイプだし、定年してしょぼくれても嫌だと思って言えなかったみたいなんです。悪かったと思ってね。ゴルフで知り合ったファイナンシャルプランナーの先生に相談して、このままじゃ破産だってあり得るって言われて。住宅ローンもちょうど終わったので、今さらだけど収入に合わせて生活しはじめたところです」

 

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