1億円の資産を手に会社を飛び出したが…「想定外」の連続

Aさん(55歳)は、都内の専門商社で30年間営業職を続けてきました。決して部署のトップセールスではありませんでしたが、コツコツと安定した成績を残してきました。

しかし、50代に差し掛かったころから営業力に陰りが。四半期ごとの売上ノルマ未達を理由に、上司から「このままでは役職定年後の処遇に影響が出る」と毎週のように言われ続け、心が折れていきました。

そんなAさんの転機は3年前。「これからの時代は投資が必須」というメディアの情報に感化され、YouTubeで投資関連の動画を見まくり、自分でも株式投資とFXを始めます。

株式市場の活況期に、いくつかの銘柄で利益を上げ、FXでも為替変動を捉えて利益を確保。一時的に資産が急増したことから「投資の才能があるかもしれない」という思いが芽生えました。

そして、退職金1,800万円と30年かけて貯めた預貯金(投資の利益を含む)8,200万円を合わせた1億円の資産を手に、「これだけあれば月50万円の利益は簡単に出せる」と確信、意気揚々と会社を去りました。

「ざまあみろ!」と心の中でパワハラ上司に呟きながら、肩で風を切って退職したのです。

しかし、退職からわずか1年後、Aさんの資産は激減します。投資の勉強は自己流で、経験も浅かったため、次第に資産は減少。FXではレバレッジ取引で大きな損失を被り、気づけば資産は4,200万円ほどまで減り、生活費に不安を覚えるように。自由を満喫するはずが、急激な資産減少により生活が一変したのです。

さらに追い打ちとなったのが83歳の父親の介護施設入所でした。自営業だった父の年金額は月7万円ほど。介護費用の月額17万円との差額10万円を、一人息子のAさんが負担することになったのです。

年間120万円の予期せぬ支出に、投資資金の取り崩しは避けられません。投資で減った分を取り戻せる自信もすっかり失ったAさんは、眠れぬ夜を過ごすことになりました。