(※写真はイメージです/PIXTA)

定年後も働き続けるシニア層が増えているなか、彼らが直面する現実は厳しいものです。現役時代に豊富な経験やスキルがあるようにみえても、十分に活かすことができず、非正規雇用や低賃金の職に就かざるを得ない人も少なくありません。本記事では、高橋さん(仮名)の事例とともにシニア層が財務的安定を確保する方法について、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナー・波多勇気氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

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高すぎるプライドがズタズタに…

「これが現実なのか? いや、こんなはずはない……」

 

都内のハローワーク。高橋さん(仮名)は、カウンターの前でじっと求人票を見つめていました。かつて、彼はメガバンクの幹部候補としてキャリアを積み、最高月収は200万円を超え。とりまとめていた部下は50人以上いました。65歳での定年退職後も、豊富な経験を活かしてすぐに新たな職が見つかると信じていました。

 

しかし、現実は大きく違ったようです。ハローワークで紹介された求人は、警備員やマンション管理人、時給1,200円の事務職ばかり。目の前に積まれた求人票には、かつての栄光とは程遠い条件が並んでいました。

 

定年退職後も働く理由

高橋さんは老後の生活費を計算し、愕然としました。退職金3,000万円と企業年金を合わせても、月々の支出を考えれば20年後には資産が尽きることがわかったのです。物価上昇や医療費の増加を考慮すると不安が募ります。「落ち込んでいる場合じゃない。まだ気力も体力も十分にある。俺はまだまだたくさん稼げるぞ!」と妻に宣言し、意気込んでハローワークにやってきた矢先のことでした。

 

「私のような経歴の者に合う仕事はありますか?」

 

「そうですね……シニア向けの求人ですと、このあたりでしょうか」

 

窓口の担当者が無造作に差し出した数枚の求人票。そこには、工場作業員、配送ドライバー、コンビニの深夜スタッフといった職種が並んでいました。

 

「これは……冗談でしょうか?」そう口からでかけましたが、担当者は真剣な表情。銀行員時代、高橋さんが主に関わっていたのは経営者や富裕層などの“選ばれし者たち”です。しかし、ここでは彼自身が“その他大勢”の求職者に過ぎませんでした。

 

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次ページシニア層向けの求人は増えているものの…

※プライバシーのため、実際の事例内容を一部改変しています。

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