【DX推進失敗事例】現場社員に社内業務への意見を募集…「絶対にしてはいけない質問」とは?

【DX推進失敗事例】現場社員に社内業務への意見を募集…「絶対にしてはいけない質問」とは?
(※写真はイメージです/PIXTA)

DX推進にあたって、経営者が現場の意見を募集するケースが度々散見されます。そのようななか、現場の意見募集の際に、絶対にしてはいけない質問があるといいます。一体どのような質問でしょうか? 不動産販売事業を経営する筆者・中西聖氏が自社で進めたDXプロジェクトの経験をもとに解説します。

「八重入力」が起こってしまったワケ

八重入力は次のようなプロセスで生み出されていた。

 

まず顧客からの問い合わせがあった時に、問い合わせを受けた営業が見込み客として基本情報を入力する。成約に至ると正式な書類を作成する必要があるため、そこで不足している情報を聞き追加情報を入力する。この契約書は出力して書棚に収納されるのだが、契約を管理する部門でもこの顧客の情報が必要になる。そのためキャビネットから書類を出し、専用の書式に入力する。

 

契約内容によって賃貸管理、建物管理の部門もそれぞれ顧客情報が必要となるため、そこで入力が発生する。さらに経理も顧客情報が必要なので、そこでもまた入力する。

 

こうしてまとまったデータは、出力して書類として保管する。どうりで日々大量の紙を使うはずである。まさに紙の呪縛だ。

 

また、営業、契約管理、経理などそれぞれの部門が把握している情報は不完全であるため分かっている情報は入力し、分からない項目は空欄となり、歯抜け状態で管理されることになる。

 

僕が見た「22時の光景」はまさにこの状況だ。必要な情報が空欄となっているため、その情報を他部門が作成した書類で確認し、入力していたのだ。

 

このような修正を含めて最も多いケースが八重入力で、それに近い回数の多重入力はほかにも少なくないということだった。

 

根本的な原因はなにか

根本的な原因は何か。各部門で共通のデータベースがないことが原因なら、どの部門のどの端末からもアクセスできるデータの一元化が解決策になると思った。しかし、実際にはもっと複雑であるという。

 

メンバーによれば、データベースがあれば入力を簡素化できるが、各部門が使っているソフトが違うため互換性がないという。そこをつながない限り、紙で出力して書類を見ながら再入力するという手順は減らせない。

 

また、部門内でもデータの入力方法が違っている。例えば、賃貸部門は入居者に対して2年ごとの更新確認を行う。賃貸契約を解約するか更新するかを聞いて、顧客情報を最新の情報にする。

 

この業務は顧客情報をデータ化しておくことにより、いちいち書類を取るためにキャビネットを開け、書類を探し出す手間と時間が省ける。

 

販売部門や賃貸部門の営業担当者が同じCRMツールに顧客情報を入力すれば、少なくとも部内での情報共有はやりやすくなり、部門をまたぐ連携もできるようになる。そのためのCRMツールもすでに導入済みだ。

 

しかし、社員のなかには「原本を確認したい」「紙のほうが慣れている」と感じる人がいて、彼らはCRMツールを使っていない。CRMツールに入力している人がいれば自分のPCのエクセルに入力している人もいるため、データが共有できないというわけだった。

 

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※本連載は、中西聖氏の書籍『DX戦記 ゼロから挑んだ デジタル経営改革ストーリー』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

中西 聖

幻冬舎メディアコンサルティング

紙ありき、無駄な残業、膨れ上がる営業コスト…… 非効率極まりないアナログだらけの日常から脱却せよ! 課題山積の不動産会社はいかにして 「不動産×IT」のハイブリッド企業に進化したのか? 「失敗することでしか前…

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