CRMツール導入も…まったく活用されない現場の実情
CRMツールを導入したのは2016年のことだ。導入の背景については細かく覚えていなかったが、「このツールを使えば売上アップにつながる」「業務が効率化する」といった話が営業部門から上がってきたことがきっかけだった。
顧客名簿の一元化は当時から経営会議の議題になっていた。顧客情報が営業担当者の頭の中やPCの中だけにあっても意味がない。セキュリティ面での不安も存在する。名簿情報を共有して活用できるようにしないといけない。そんな話が出て、情報共有のためのCRMツールの導入に至った。
いくら優れたツールでも、使う人が少なければ情報共有もできない。このツールはまさにその典型で、導入から2年間にわたって顧客の基本情報を入力しておく「見込み帳」のようなものとしてしか使われていなかったというわけだった。
「全然使われていない、ということですか?」僕は現状について聞いた。
「中途半端に使われていて、そのせいで入力作業の負担が大きくなっています。顧客情報はCRMツールに入力し、案件ごとの情報はエクセルで管理するといった非効率な作業が発生しているのが現状です」
メンバーはそう答え、CRMツールを活用するなら、他部門でも使えるようにし、営業部門においても、もう1度入力を徹底するように働きかける必要があると付け加えた。
デジタル化チームの規模拡大で現場の状況をヒアリング
CRMツールがあるのにエクセルで入力するのはなぜなのか。現場には現場の理由がある。入力や管理がしづらいといった難点があるから、それぞれが好む入力方法を選ぶことになり、それが多重入力につながっているのだろう。
現場にはほかにもデジタル化の障害となり得る理由や事情があると思った。その詳細を把握するために、僕はデジタル化チームの規模を大きくすることにした。7つある各部門でITに詳しそうな人やその分野に関心がある社員を選び出してもらい、CRMツール活用の課題をヒアリングしてもらう。
デジタル化してほしい業務についても現場でヒアリングしてもらい、週1回の定例ミーティングでその内容を共有し、もともとのメンバー2人に現場から上がってきた意見を取りまとめてもらう。各案の実現可能性や、導入するとしたらどれくらいの期間でできそうかを整理してもらうことにした。
規模を拡大したミーティングは、さまざまな意見を聞くことができ刺激的だった。書類をPC上で修正できるようにしたい、スマホで顧客情報を見られるようにしたい、メール以外のコミュニケーション手段が欲しいなど、現場の要求や現場が感じている課題がリアルに分かることが面白かったし、「あんなことができそうだ」「こんなことができるかもしれない」と想像して語る議論自体が楽しかった。
現場の要望を組み合わせれば無駄な業務が減り働き方の変革につながる。現場の声を深く聞くほど詳細なロードマップができる。僕はそう考えて、メンバー2人にツールの候補、予算、ガントチャートの作成などを頼んだ。
ガントチャートとは、スケジュールの管理表のようなものだ。それができることによって社内業務をデジタル化していく流れが可視化でき、変革後の会社の未来もよりリアルに見えてくるのではないかと思った。
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