無駄タスクの洗い出しで判明…「八重入力」の衝撃
デジタル化チームができ、僕はメンバー2人とのミーティングを定例化して、進捗状況を把握することにした。初回のミーティングは、社内業務のデジタル化を決めた経営会議の数日後に行った。
メンバーに向けて、僕はまず社内業務のデジタル化の目的と期待できる効果を伝えた。また、このプロジェクトを立ち上げたきっかけが深夜まで残業している社員を見たことだったため、ロードマップ作成(※)のために顧客情報の二重入力がどれくらいあるか、入力のやり直しや書類の間違い探しのような業務が多いのはどの部門か、といった現状を調べてもらうよう頼んだ。
※筆者・中西聖氏は、プロジェクトの第1歩として社内業務をデジタル化していくためのロードマップを作成した。
参照:連載第1回『DX推進に「精密な」ロードマップは無駄といえる理由』
彼らから報告を受けたのはそれから1週間後のことだ。そこで僕は衝撃の事実を知る。衝撃というよりも笑撃といったほうが良いかもしれない。
「二重入力の件を調べましたが、想像以上でした」とメンバーが言う。
「想像以上、というと?」僕がそう聞くと、メンバーは営業や経理の担当者などから聞き取ったという入力の現状をまとめたシートを取り出した。
シートには、誰が、どのソフトで、どんなタイミングで入力しているかなどをヒアリングした結果がまとめられていた。「この顧客の情報を見てください」とメンバーが差し出した資料には顧客の名前がリスト化されており、同じ名前のところに蛍光マーカーで印が付けてある。パッと見ただけで、同じ顧客の情報を複数の部門で入力していることが分かった。
「八重です」とメンバーが言う。「八重……?」僕は一瞬、その言葉の意味が分からなかったが、要するに多重入力の実態は二重どころではなく、同じデータを複数の部門で合計8回入力していたのだった。
人は想像を超えることが起きると、一瞬相手の言葉が理解できなくなる。感覚が一時的に麻痺するのか、妙におかしく感じてしまうことがあるらしい。この時の僕はまさにその状態だった。八重入力の実態が理解できず、理解したあとでなんだかおかしくなりつい笑ってしまった。
《最新のDX動向・人気記事・セミナー情報をお届け!》
≫≫≫DXナビ メルマガ登録はこちら