人材不足の日本で生産性を上げるには「DX」が必須
DXについての理解を深めていきながら、僕はDXが非常に重要なテーマだと確信した。DXは世界的に注目されている大きなテーマになりつつあり、そのなかでも遅れている日本はDXによって大きなメリットが得られる。
世界では人口が増え続けているが、日本は人口減少が確定している。GDPなどで表す国の経済成長は人口と生産性の掛け算である。人口が増えることによって世界経済は成長するが、人口が減る日本は成長が難しくなる。
そこでポイントとなるのが生産性だ。生産性はオペレーショナルエクセレンスにおいても重要なキーワードの一つとなっている。人口が減っても生産性が伸びればトータルでは経済の衰退を避けることができる。人口減少の影響より生産性向上の影響のほうが大きければ、経済を成長させることもできる。
では、どうすれば生産性を高められるのか。そこでデジタル化やDXの話につながる。時間と手間が掛かる仕事は機械に任せて、もっと付加価値が高い仕事に人が従事できるようにすれば生産性は上がる。人口減少の影響を受ける日本は、どの国よりも真剣に生産性向上に取り組む必要があり、そのための手段としてデジタル化やDXに取り組まなければならないともいえる。
僕はただ単にデジタル化を推進するのではなく、本当の意味で生産性を上げ、顧客価値のためにも競争優位性をもち得るためにも本腰を入れるしかないと思った。そのためにはプロジェクトメンバーにも本気で取り組んでもらう必要がある。そう決意し、僕はプロジェクトチームの刷新に踏み出したのだ。
社内でDXを進める際に、本気度が劣る「兼務」という悪手
現状、メンバーの2人は所属部門の業務と兼務でプロジェクトに関わっている。兼務では基本的には所属部門の仕事が優先になるため、時間や労力に限りがあり、DXに本気で取り組んでもらうことは難しい。DXの取り組みが片手間になるだけでなく、負荷が大きく忙しさも増すため、そのせいで本業の仕事に取り組むモチベーションも下がりやすくなる。
2人は真面目だから、指示したとおりのことを100%返してくれる。しかし、DXリテラシーの面から考えると、彼らの100%が会社として取り組む社内DXの限界になっている。僕は「ITに詳しそうだから」という理由でメンバーに選出した。
しかし、DXはそんなに甘いものではなかった。中華料理専門のシェフに美味しいイタリアンを作ってほしいというようなもので、できないことはないかもしれないが、できることは限られるのだ。
実際、僕がDXの構想について話しても、メンバー2人はどこか気の乗らない反応になっていたこともあった。それはDXがどうこうという問題ではなく、もっと単純に、忙しい、やることが多い、考えることが多いといったことが原因で、思考量と行動量の面でメンバーのキャパシティを超えていたことが問題だった。現状の足踏み状態はメンバーの能力の問題ではない。人材の選出と配置が根本的な問題なのだ。
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