ウクライナ侵攻開始直前…プーチンに「異論を唱えようとした」たったひとりの男の存在

ウクライナ侵攻開始直前…プーチンに「異論を唱えようとした」たったひとりの男の存在

ウクライナ侵攻によって、より独裁者としての色を強めた現ロシア大統領のウラジーミル・ウラジーミロビッチ・プーチン。侵攻開始直前の2月21日に行われた安全保障会では、ほとんの参加メンバーがプーチンに忖度するなか、たったひとり「異議を唱えようとした」男がいました。それはいったい誰なのか。また、世界を敵にまわしても侵略を決断したプーチンの思惑とは……大統領就任前からプーチンを追う元外交官で作家の佐藤優氏が考察する。

日本も「心情を切り離した」冷静なロシアの分析が必須

今回のロシアによるウクライナ侵攻は、ウクライナの主権と領土の一体性を毀損するとともに、既存の国際秩序を武力によって変更する、許すことのできない行為だ。日本、アメリカ、EU(ヨーロッパ連合)は団結してロシアを最大の言葉で非難し、最大限の経済制裁を加えている。しかし、経済制裁によってプーチン政権が倒れることはない。

 

ロシアがウクライナに侵攻した以上は、東西冷戦終結後のロシア観は改めなくてはならない。ロシアは日本にとって現実的な脅威になった。

 

現在、日本のマスメディアは、当然のことであるがウクライナに同情的になり、ロシア叩きが進行している。ウクライナに対して少しでも批判的な発言をすると、インターネット空間ではバッシングの対象になるという状態だ。あえて言うが、このような現状は危険だ。情勢分析は、心情や価値判断をいったん括弧の中に入れて、冷静に行わなくてはならない。

 

太平洋戦争が始まると、日本人は「鬼畜米英」のスローガンを叫び、ルーズベルト大統領やチャーチル首相のわら人形に竹槍を突き刺して戦意を昂揚させた。しかし、そのような形で士気を高めても、圧倒的な生産力の差がある日本がアメリカに勝つことは不可能だった。

 

対してアメリカは、文化人類学者を集めて日本人研究を行った。この報告書を基にして、ルース・ベネディクトは日本人論の古典である『菊と刀』を書いた。また沖縄人研究のプロジェクトが別途組まれ、その結果は『民事ハンドブック』にまとめられている。

 

日本にとって脅威となるロシアの論理と思考を理解していくことが、これから死活的に重要になる。そうしなくては、正しい対策を立てることができなくなるからだ。

 

 

佐藤 優
作家・元外務省主任分析官・同志社大学神学部客員教授

 

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※本記事は、佐藤優氏の著書『プーチンの野望』(潮新書)から一部を抜粋し、GGO編集部にて再編集したものです。

プーチンの野望

プーチンの野望

佐藤 優

潮出版社

ロシアとウクライナの歴史、宗教、地政学、さらには外務官僚時代、若き日のプーチンに出会った著者だからこそ論及できるプーチンの内在的論理から、ウクライナ戦争勃発の理由を読み解き、停戦への道筋を示す。 〈戦争の興奮…

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