ウクライナへの侵攻により世界中から非難を浴びたようにみえたロシアですが、「ロシアは国際社会から孤立している」という固定観念は危うく、戦争が終わってみると「新たなネットワークができあがっている世界」を目の当たりにするかもしれないと、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏はいいます。それはいったいどういうことか、みていきましょう。

通貨価値は上昇、国連では中立が多数という事実

見落としてはいけないのは、ロシアは意外と孤立していないという事実だ。西側諸国は、厳しい経済制裁によってロシアを締め上げ、音を上げさせようとしているが、経済制裁によってプーチン政権が倒れることはない。

 

考えてもみてほしい。経済制裁によって、体制が倒れた国がこれまでどこにあるというのか。世界中から激しい経済制裁を受けてきた北朝鮮もイランも、体制は転覆していない。少なくとも今のロシアは、北朝鮮やイランよりはよほど体力がある。

 

アメリカの目論見によると、大変なハイパーインフレによってロシアのルーブルは価値を失い、紙切れ同然になるはずだった。現実には、ルーブルの国際為替レートはどのように推移したか。

 

戦争が始まった時点で1ドル=80ルーブル、開戦から10日ほど過ぎた3月7日には1ドル=150ルーブル前後まで通貨の価値は下落した。ところが本稿執筆中のレートは、1ドル=66.50ルーブルだ(2022年5月7日現在)。

 

戦争が始まる前よりも、開戦2ヵ月後のほうがルーブルの価値は高まっているのだ。数字として表れている現実から目をそらし、自分たちに都合が悪い現実を認めないという不誠実な態度は良くない。

 

ロシアは国際社会の中で孤立するどころか、世界では地政学的な変動が起きている。「ロシアが国際社会から孤立している」という見方で固まっていると、この戦争が終わったとき、思わぬネットワークが出来上がっている世界を目の当たりにするかもしれない。

 

2022年4月12日、プーチン大統領は極東アムール州のボストーチヌイ宇宙基地で、侵攻を開始して以来初めての記者会見を開いた。この場でプーチンは「ロシアは世界から孤立するつもりもないし、ロシアを孤立させることも不可能だ」(4月13日付「毎日新聞」)と話した。これはただの強がりではない。

 

ウクライナからのロシアの即時撤退を求める決議が、3月2日の国連総会で行われた。決議には193ヵ国中141ヵ国が賛成した。ロシア、ベラルーシ、シリア、北朝鮮、エリトリアの5ヵ国だけが反対し、中国やインドなど35ヵ国が棄権している。人権理事会におけるロシアの理事国資格を停止させる4月7日の決議では、賛成が93ヵ国に減った。中国など24ヵ国が反対し、58ヵ国が棄権に回ったのだ。

 

自由と民主主義を掲げる陣営は、この数がもつ意味を深く考えていない。4月7日の決議で反対に回った国は、中国、北朝鮮、イラン、キューバ、シリアなど、一昔前の言葉を用いるならば、いわゆる「ならず者国家」だ。

 

ただし、中立的な立場を取ろうとする国を加えると、世界の約半分を占めたことになる。さらに国家の人口で言うならば、アメリカの立場に賛成する人々のほうが少ないのだ。

 

ちなみに、1933年に日本が国際連盟を脱退したとき、リットン調査団の報告書採択に反対したのは日本だけだ。棄権はシャム(タイ)だけだった。

 

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※本記事は、佐藤優氏の著書『プーチンの野望』(潮新書)から一部を抜粋し、GGO編集部にて再編集したものです。

プーチンの野望

プーチンの野望

佐藤 優

潮出版社

ロシアとウクライナの歴史、宗教、地政学、さらには外務官僚時代、若き日のプーチンに出会った著者だからこそ論及できるプーチンの内在的論理から、ウクライナ戦争勃発の理由を読み解き、停戦への道筋を示す。 〈戦争の興奮…

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