ウクライナ・ロシア戦争の陰で渦巻く各国の思惑
ロシアとネットワークを築く国として、しばしば中国が挙げられる。インドもまた、ロシアと経済的な結びつきを深めている。
「自由で開かれたインド太平洋」を守るために、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4ヵ国で安全保障や経済について協議する「Quad(日米豪印戦略対話)」が2007年につくられた。Quadは軍事同盟ではないものの、合同軍事演習を実施している。
Quadの一員であるインドは、今回の対ロ非難に加わらなかった。インドは兵器の4割をロシアから買っており、既存の装備品の8割はロシア製だ。だから兵器のメンテナンスの問題が生じる。
ただし、単に「武器依存度が高いから、インドは対ロ制裁に踏み切れない」という解説は一面的で事態の本質を捉え損ねる。「ロシアとの関係では、極力中立的な地位を維持したい」というインドの主体的な意思の表れだ。
インドにとって重要なのは、中国の脅威に対して、オーストラリアとアメリカと日本を巻き込むことだ。Quadは価値観同盟ではなく、中国を封じ込める利益があるからつきあっている。それ以上でも以下でもないことが露見した。現にウクライナ侵攻によって割安になったロシア産原油を、インドは購入している。
対ロ関係で意外と気づかれていない重要な存在が、サウジアラビアだ。アメリカとイギリスはサウジに対し、原油を増産してロシアを孤立させる取り組みに加わるよう働きかけた。しかしサウジは応じていない。ロシアと手を握っているからだ。中国に販売する原油の一部を、人民元建てにする方向で協議中だという報道もある。
サウジアラビアにとって、西側の消費文明を受け入れながらも、政治に関しては権威的な体制を取るロシアや中国は、つきあうのに都合がいい。人権外交を掲げるアメリカよりも、独自のルールを尊重してくれるからだ。アフリカや中南米の諸国も同じ感覚だ。結局どの国も、イデオロギーや価値観より利害で動くのである。
アメリカや日本と歩調を一にしているのは、EU諸国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどロシアが非友好国としている国だ(もっともEUの中でも、ハンガリーは日和見的だが)。
新しい世界地図の上で、日本はどうやって生き残っていくのか。東アジアにおいて、ロシアと北朝鮮はすでに現実的な脅威だ。中ロの軍事協力が進んでロシアの最新兵器を中国が得れば、軍事力はさらに高まる。韓国は中ロとの関係も深く、歴史認識などさまざまな問題で日本に厳しく当たってくる。
国ごとに抱える事情を等閑視してはならない。ロシア、北朝鮮、そして中国は日本にとっての脅威であり、韓国はどっちを向いているのかわからない。こうした国際関係の新たな緊張の中で、日本は最前線に立たされる可能性がある。
アメリカとの同盟は重要だ。しかし、それがアメリカと価値観を完全に共有する「イデオロギー同盟」という選択肢で良いのか。この点について、日本は自分の頭で真剣に考えなくてはならない。
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