(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者の仕事やボランティアの面接で、自分がいかに偉かったかを披露する方がいます。高齢者に求められるのは、すごい人より一緒に働きたくなる穏やかで気の利く人です。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)で解説します。

現役時代にできなかったことに取り組む

■ボケても、おしまいではない

 

「ボケたらおしまいだ」と言う方がいます。しかし、そういうあなたは実はしっかりボケています。

 

そんなあなたに、できたら「ボケ力」を鍛えて、世の中を明るくしていってほしいのです。

 

いまだに、世の中は競争社会。蹴落とし蹴落とされ、長時間働いてくじけていく若い人も多いです。

 

「そんな若者はダメだ」「俺が若いときはもっと働いた」なんて叱咤激励していませんか。あなたの若いときとは時代が違い、あなたは現実がよくわかっていないこともあるのです。

 

現在は、なんだか不安で心配な世の中です。そんなときは「ボケ力」を発揮して、「なんとかなるもんだ」とボケていきましょう。「じいさんは気楽でいいよな」と言われてもいいのです。

 

子どもや孫、困っている誰かのそばでボケていられる年齢になったのです。

 

「早く早く」と人を追い立てるのではなく、お茶でも飲んでお喋りしたくなるような「ボケ力」を身につけてほしいと思います。

 

老いたら、少し謙虚にする、若い人を立てる心が大事だと思います。

 

エリクソンの「ライフサイクル論」を思い出してください。壮年期の課題は「世代性」でした。つぎの世代へ知識やものを受け継いでいく。しかし、それは自分の子どもに財産を残すというケチな話ではありません。

 

若い人たちが元気で住みよい世の中をつくっていくことです。

 

しかし、壮年期は忙しくて人のことを考えている余裕はないでしょう。老齢期こそやっと自分の時間ができます。

 

一方で、自分の時間が限りあるものだとわかるときです。あと、5年元気でいるか、10年か。時間の流れを考えたらあっという間の人生になってしまいます。

 

壮年期にはできなかったことをやっていきましょう。肩の力を抜いて「ボケ力」を発揮し、あなたもまわりも幸せにしていってほしいと思います。

 

和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長

 

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本連載は和田秀樹氏の著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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