(※写真はイメージです/PIXTA)

これまでの50代の仕事人生は、ある意味、「準備期間」「修業期間」だと思い直したらどうでしょうか。それまでの経験をベースに、より充実した仕事にトライするという発想転換です。ジャーナリストの岡田豊氏が著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)で解説します。

なぜ50代男性は批判や愚痴が多いのか?

■50代からのスタート「成功より成長」

 

「批判や愚痴が一番多いのは50代の男性だ」

 

某会社で苦情などを受け付ける担当の知人はこう言います。50代といえば、会社社会だと、昇進、出世、出向、役職定年、準定年、リストラに直面する年齢です。会社人生の形式上の“成否”が見えてくる年齢です。ストレス、悩みは想像に難くありません。

 

愚痴もこぼしたくなるでしょうし、知識も肥えていて何かと批判したくなる気分も理解できます。正論を貫いて、まっとうに仕事をしてきたのに、理不尽な組織の論理で思うような会社人生を送れなかったとしたら、落ち込む人もいるでしょう。

 

でも、思い詰めることなどありません。

 

「社長は、自分より有能な人材を後継者に選ばない」

 

よく言われる言葉です。自分より優秀な人材を後継に選べば、自分の存在が排除され、自分の影響力が行使できなくなるから、イエスマンを選ぶという理屈です。組織人事の一面を表しています。組織とはそんな程度だと割り切ってもいいのかもしれません。

 

「自分の人生が否定された」「自分の能力が足りなかった」などと思い詰めるのはナンセンスかもしれません。会社の価値観に一方的に支配されるのは実にバカバカしい。

 

50代は60歳という大きな節目を前に、心は揺れやすいだろうと思います。50代の自殺者が多いのは、50代の人生の悲哀と無関係ではないと思います。

 

だからこそ、50代での切り替えは大事だと思います。自考が必要です。本当にやりたかった仕事は何か。子どものころになりたかった職業を思い浮かべる。学生時代にあきらめていた夢を思い出す。健康であれば、50代から始められることは結構あるはずです。成功と失敗。経験も豊富です。

 

それまでの仕事人生は、ある意味、「準備期間」「修業期間」だと思い直したらどうでしょうか。それまでの経験をベースに、より充実した仕事にトライするという発想転換です。NGO、NPOの活動もいいと思います。過去の発想、過去の環境をいったん洗い流し、自考してみる。50代のモチベーション喪失は、あまりにももったいない。50代が元気にならないと社会の大きな損失になってしまいます。

 

私の友人は銀行で“出世”できませんでした。退職したら、貯蓄を投じて「子ども食堂」を立ち上げる計画を立てています。彼は数年前、がんの手術をしてから、こう言うようになりました。

 

「自分が生きた証しとして、人の役に立つ仕事をしたいという思いが強くなった」

 

その夢が「子ども食堂」です。

 

ニューヨークで知り合った不動産業の70代の日系人男性は言います。

 

「この年になっても、やりたい夢や新しい目標が次から次へと湧いてきます。50代なんてスタートするのにまったく遅くない。これからですよ」

 

人生はこれからです。年金がもらえる年齢は遅くなることはあっても早まることはありません。健康なうちは働いた方が何かと得でもあります。50代は何かと身体にガタが来始めますが、健康でさえあれば、あと20年くらいは、しっかり働けます。20年もあれば、立派な会社を育て上げることだってできるかもしれません。

 

「自分は成功した」と思った瞬間に、その人の成長は止まってしまいます。いろいろな経験をして、いつまでも人として成長し続けられれば、それは人生の充実につながるはずです。大事なのは「成功よりも成長」だと思います。

 

岡田 豊
ジャーナリスト

 

 

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本連載は、岡田豊氏の著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

自考

自考

岡田 豊

プレジデント社

アメリカでの勤務を終えて帰国した時、著者は日本は実に息苦しい社会だと気付いたという。人をはかるモノサシ、価値観、基準の数があまりにも少ない。自殺する人があまりにも多い。笑っている人が少ない。他人を妬む。他人を排…

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