(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の家計は「年金がいくらあるか」だけで決まるものではありません。総務省『家計調査(家計収支編)2024年平均』によれば、夫婦ともに65歳以上の無職世帯は、可処分所得が月約22.2万円であるのに対し、消費支出は約25.7万円と、年金だけでは不足が生じやすい構造が示されています。こうしたなかで配偶者との死別が起きると、家計は「二人分の年金」から「一人分の年金+遺族年金」へと切り替わります。ところが遺族年金については、「夫の年金がそのまま残る」といったイメージで捉えている人も少なくありません。

「これで暮らしていける」…月23万円の前提

都内近郊で暮らす美佐子さん(仮名・68歳)は、昨年71歳で夫を亡くしました。子どもは独立し、夫婦二人の年金生活を送っていました。

 

夫の年金が月14万円、自分の年金が月9万円。合計で月23万円です。貯蓄は大きくはないものの、持ち家でローンもありません。

 

「贅沢しなければ、なんとかなる」

 

そう思っていました。むしろ、美佐子さんが安心していたのは“もし夫に何かあっても、遺族年金がある”という認識でした。

 

夫の葬儀や手続きを終えた数ヵ月後、年金の改定通知が届きます。封筒を開けた美佐子さんは、思わず声を漏らしました。

 

「……え? これだけ?」

 

そこに書かれていた、今後の支給見込み額は月16万円台。

 

「遺族年金って、夫の年金が引き継がれるんじゃないの?」

 

頭の中で前提が崩れました。月23万円で組んでいた家計が、一気に縮む――その現実が紙一枚で突きつけられたのです。

 

美佐子さんの誤算は、多くの人が抱きがちな思い込みでした。

 

まず、子どものいない妻が受け取る遺族年金の中心は遺族厚生年金です(遺族基礎年金は原則として子のいる配偶者等が対象)。遺族厚生年金の基本は、亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3が目安になります。

 

ただし、65歳以降は、自分の老齢厚生年金を受け取ることが優先されます。そのうえで、亡くなった夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3に相当する遺族厚生年金との差額のみが支給される仕組みになります。そのため「夫の年金がそのまま残る」わけではありません。

 

美佐子さんのケースでは、夫の年金14万円のすべてが遺族年金の対象になるわけではありません。遺族厚生年金は老齢厚生年金の報酬比例部分を基に計算されるため、基礎年金部分は含まれません。

 

さらに65歳以降は、自身の老齢厚生年金が優先して支給され、そのうえで遺族厚生年金との差額のみが調整される仕組みです。そのため「夫婦で月23万円あった年金が維持される」という期待には届かなかったのです。

 

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